糖尿病とうつ
2007年 04月 24日
(The Diabetes Educator, Vol. 32, No. 4, 603-613 (2006)から)・・・が提唱されている(私個人としては、実はあんまりぴんとこないが・・・)
一概に、うつと糖尿病の関係といっても・・・
1)健常者の糖尿病発症との関係などが有ると思う
2)糖尿病患者のコントロール悪化との関係
3)糖尿病患者の予後(生存、臓器障害など)
4)うつ介入にて、発症、コントロール改善、予後改善がみられるか?
寄稿をおもいたった論文では調査開始時糖尿病罹病のない人たちで、うつ患者の縦軸観察
Longitudinal Association Between Depressive Symptoms and Incident Type 2 Diabetes Mellitus in Older Adults
The Cardiovascular Health Study
Arch Intern Med. 2007;167:802-807.
高度うつ症状、持続的な高度うつ症状、経時的な持続的な高度うつは65歳以上の糖尿病の進展と相関。
Cardiovascular Health Studyの参加者で、 10-item Center for Epidemiological Studies–Depression Scale (CES-D) を毎年報告
調査ベースラインでの高度うつ症状(CES-D スコア ≧8)やフォローアップ中の症状増悪(ベースラインから≧5の増加)、高度症状持続(2回連続スコア ≧8)のとき、糖尿病との関連を調査
対象者はベースラインで糖尿病のない患者で、糖尿病患者とは薬物開始し始めた患者と定義
平均CES-Dスコアは4.5(SD 4.5)
糖尿病発生頻度1000人年4.4
人口動態的特徴・身体運動・喫煙・アルコール・BMI、CRP補正後、うつ症状の測定は有意に糖尿病増加と関連
調査ベースライン時点の高度うつ症状 : CES-D score:ハザード比 1.6 [95%信頼区間 1.1-2.3]
うつスコアの増加 : CES-D score 増加: ハザード比 1.5 [95%信頼区間 1.1-2.2]
持続性の高度症状 : ハザード比1.5 [95%信頼区間 1.1-2.3])
成人糖尿病患者におけるうつ(Psychiatric TImes Jan 2002, Vol. XIX, Issue 1))
糖化ヘモグロビンはうつと関連し、約1%ほどの臨床的に有意な増加がみられる (Lustman et al., 2000b).
うつは、他の糖尿病コントロール悪化要因、すなわち、身体運動定価、肥満、コンプライアンスの悪さと関連し、いずれもインスリン抵抗性を増加させる(Farmer et al., 1988; Frederick et al., 1988; Littlefield et al., 1992; Lustman et al., 1992).
うつ治療は鬱症状を改善し、QOL、糖コントロールを改善する可能性があるが、25%ほどしか治療されていないという報告(Arch Intern Med. 2000;160:3278-3285.)がある。
The Diabetes Educator, Vol. 32, No. 4, 603-613 (2006)
糖尿病老人の15-30%にみられ、アウトカムヘ影響をあたえる(Diabetes Care 24:1069-1078, 2001)。うつを有する患者は、糖尿病関連症状が多く、糖コントロールが悪く、合併症頻度が高く、死亡率が高い。
合併症としての糖尿病は自己マネージメントがpoorで、食事療法・薬物療法非遵守、身体運動低下などあり、医療コストを引き上げる
合併症との関係
メタアナリシスにて神経症・腎症・網膜症・大血管疾患との有意な相関が認められた(range of effect sizes (r)=0.17 to 0.32, p<0.05 for all) (de Groot et al., 2001)
前向き研究でもうつの存在が糖尿病女性の冠動脈疾患を促進するという研究 (Lloyd et al., Diabetes 1997; 46: 13A. ).
うつは、自己認識過程(perceptual process)に影響を与え、痛み・身体症状への認容性を低下させているように思える。糖尿病に伴う神経障害による痛みは通常なら耐えられるものだが、うつの場合は耐えられず、診察を受けることとなる。生化学マーカーより短期的にはこういった情緒的ものの方が症状に関して重要な予後因子となっているのである。故に、症状に関してうつが非常に重要な因子となる
治療
三環系抗うつ薬:体重増加、抗コリン作用による副作用、起立性低血圧、他の心血管系副作用で問題になる。さらに、糖のコントロール自体を悪くするという報告 (Lustman et al., 1997b)がある。
nortriptyline (Aventyl, Pamelor) は鬱治療に有効だが、やはり高血糖の副作用があり、体重への影響と関係のないものである。SSRIや新しい世代の抗うつ薬は高血糖を生じない葉であり、fluoxetin(Prozac)の知見(Lustman et al., 2000b)は改善が報告された。
TCAと同様にうつとして有効だが、体重増加の問題が少なく、sedationが少ない。ただ副作用としては性機能、胃腸障害、agitationが問題となる。
精神療法は有効で、糖コントロール改善にも有効 (Lustman et al., 1998).
セルトラリン(sertraline)はジェイゾロフトの商品名でファイザー(Pfizer)より販売されるはずで、(Diabetes Care 30:801-806, 2007)
by internalmedicine | 2007-04-24 09:12 | 動脈硬化/循環器