MRとの関係

MR(製薬会社医療情報担当者)との面会を行わないという開業医も増えてきた。MRさんと会うと情で薬品選定に影響を与えてしまうということだそうだ。そういう考えにも同意する。

ただ、NEJMの論文によると、“小規模な医師しかいないところほど、面会が多い”というのがある。理由としては病院やアメリカのクリニックといった大きなところは、
1)処方箋システムが自動的で医師の個別判断が少ない
2)MRとの接触制限がなされている
3)grand roundsやCMEイベントなどの教育システムがしっかりしている
4)医療情報源としてMRに頼らなくても医療情報に困らない制度・システムが整備されている
などで、大規模な医療施設では別にMRさんからの情報はいらないということなのだろう。ただでさえ情報の乏しい零細診療所で、かつ、講演会にいくのに片道1時間から1時間半以上の田舎にある当地では積極的にMRさんからの情報を得ることは大事な仕事であると私は思っているが・・・


日本でも医療用医薬品に関するプロモーション活動にも規制コードがある

「プロモーションコード」
製薬協コンプライアンス・プログラム・ガイドライン2005
医療用医薬品プロモーションコード


公正競争規約
製薬企業と公正競争規約



・・・と前書きしておいて・・・

A National Survey of Physician–Industry Relationships
NEJM Volume 356:1742-1750 April 26, 2007 Number 17
近年20年ほど医師・(医療関係の)会社との関係が注目されている。Wazanaは2000年16の研究文献(1982-1997年出版分)をレビューし、医師はMRと月4回面会し、年に6回の贈り物をもらっているという報告(JAMA. 2000;283:373-380.)がなされた。
2001年の調査(National Survey of Physicians. Part II: Doctors and prescription drugs. Washington, DC: Kaiser Family Foundation, March 2002.)では薬剤サンプルを92%、食事をイベントのチケット・ただの旅行を61%、経済的な、利益を得るものが13%、臨床トライアルのインセンティブを12%受け取っている。
医師側の属性に関する調査がなされてなかったとのこと。

医師・会社関係についての関心が増したため、職業団体・興行的な団体はそれに関するregulationを勧めた。Pharmaceutical Research and Manufacturers of America (PhRMA) を2002年医師・会社関係に関わる行為コードを組み込んだ。まず患者に利益のあるもので、医療の発展をもたらすものでなければならないとした。患者の利益とならない娯楽的な行事のチケット・商品(ゴルフボールやスポーツバッグなど)は医師に与えてはならないとして、時間の代償や助言として名ばかりのコンサルタント料金やポ自費の経費も思いとどまらせるものである。
米国医師会やACPもこのコードと同様なコードを採用している(NEJM Volume 351:1891-1900 October 28, 2004 Number 18)。

【結果】
94%の医師が製薬会社となんらかの関係を持っている
職場で、食事(83%)、薬剤サンプル(78%)を受け取っている。

アンケート返答者の1/3以上(35%)で医学ミーティング、継続的な医学教育、に関わるコストの償還を受け、1/4以上(28%)でコンサルティング・レクチャー、トライアルの患者参入に関わるpaymentをもらっている。
循環器科医は家庭医の2倍以上のpaymentをもらっている。
家庭医は他の専門医よりMRと会う回数が多い

一人、二人、グループ医療の医師が病院の医師よりMRと会う回数が多い


【結論】国内調査にて医師と会社の関係はcommonであり、専門、診療形態、職業的活動性によってその影響は変わる。


循環器系に関しては、薬剤の種類も多く、その新旧交代もめまぐるしい・・・逆に言えば、製薬会社側からみれば、新薬で多くの利益を得るため、営業活動に力が入るのだろう。

大手後発メーカーのMRは人口150万人程度の県に2名しかいないということであった。むしろMSは子会社のとり扱いにしているという。医師に情報提供するより調剤薬局対策にウェイトをかけているのだろう。一般名処方や後発変更可への道筋をよんでの会社の体制である。

そして、“他社および他社品を中傷・誹謗しない”ということを盾に“先発品と同じ効きめ”という詐欺的宣伝に先発MRさんたちは異議を唱えることさえできないのである。

こういう状況で、深刻な副作用が出たとき、医者はどこに相談したらよいのだろう。全国の医師たちは薬剤副作用に関し厳重に監視すると同時に、後発品メーカーの対応を特に厳重監視すべきと思う。

副作用は先発メーカーに聞いてくれという後発製薬会社は、本来社会にあってはならない存在なのである。

by internalmedicine | 2007-04-26 10:08 | 医療一般  

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