超高齢者の運動は認知機能低下に役立つ(女性の方が効果あり)

と書いたが、逆かもしれない。体を動かさない人は認知機能低下しやすい。

2ちゃんねるなどをみると、“老人氏ね”などとよく書かれている。相互扶助精神の欠如を感じる。そして、“おまえらがじじいになったときも同じようにいわれる”などとレスが書かれることとなるのだが、認知障害のことを調べると、“祖母仮説(grandmother hypothesis)”の存在に気づく。生物学的な再生産可能年齢を超えた人間は生物が期にも無用ではないのである。世代間情報伝達というのは人間の生活社会にとって重要な役割を果たしているという考えがある。
俗に言えば、“おばあちゃんの知恵”なのだが、核家族化により、世界に稀な“祖父母と孫”の世代間隔絶、これが日本社会にとって非常に危険な要因となっているのである。



・・・と、かなり脱線したが、

以下の論文は、女性では特にそれが顕著ということで、前向きということで評価できる研究なのだろう

身体運動(PA:physical activity)と、認知機能障害(CI:cognitive impairment)の関係を85歳以上で前向き研究

Physical Activity and the Risk of Dementia in Oldest Old
Journal of Aging and Health, Vol. 19, No. 2, 242-259 (2007)
66名の健康な平均88.5歳の高齢者で生存率分析
12名の男性、11名の女性で週4時間超の運動
38名でCI進展(平均発症年齢93歳、平均フォローアップ、4.7年)

運動の影響は性別で影響をうける

運動時間>4時間/週の女性はCIのリスクが88%(95%信頼区間 0.04 0.41)減少

活動性のない女性は、男性に比べてCIの発生頻度は2倍で、身体活動の高い女性に比べれば約5倍である。


この研究は超高齢者における運動の脳の加齢機能悪化への有益性をしめしたもの


身体運動の認知機能予防効果は様々報告がある。たとえば Friedlandら(2001) Kondoら(1994)などの横断的研究

Katzman(1993)は教育レベルが認知症と関係あり、複雑なニューロン・シナプス形成が予防的に働くのではないかという仮説、娯楽活動への参加が予防的に働くという研究(Fabrigouleら,1995 など)

身体運動やレジャー参加の少ないということは早期発見まで時間を経過してしまっているという要因もあるという主張があるが、診断後のケアの有効性が確立してない現状ではたしてそうなのだろうか?むしろ、研究上のベースラインの背景諸因子に影響を与えているのではないかという考えもある(Joe Vergheseら,2003)。


Honolulu-Asia Aging StudyというのもWalkingのアルツハイマー病発症予防効果を示した研究だが、他のライフスタイルや環境要因への影響、動脈硬化要因と、直接の脳のplasticity・構造・機能への影響が考察されている。身体的脆弱性との関係なども研究の余地があるとしている。

直接の影響として
・Exercise: a behavioral intervention to enhance brain health and plasticity
Trends in Neurosciences Volume 25, Issue 6, 1 June 2002, Pages 295-301
海馬の分子cascadeの活動性亢進し、脳の機能やplasticity(可塑性)に影響を与える

COGNITIVE reserve (CR) hypothesis

“Cognitive reserve (CR) is the ability of an individual to cope with advancing brain pathological abnormalities so that he or she remains free of symptoms.”
認知機能予備能は、脳の病的異常に対抗し、症状無しの状態を保つために対抗する個人の能力である



他の霊長類に比べてヒトは寿命が長いために顕著化した現象であり、祖母仮説(grandmother hypothesis)は、世代間情報伝達をより深く可能とした。"human life history stages”をもたらした。ヒトは脳の質量増加と認知機能発達という進化の中で、世代間の社会サポートネットワークの増大をもたらし、それが人間の社会自体の進化をもたらしたのである。
だが、同時に、加齢は、本来有する自然選択という側面もある。特に生殖可能年齢を過ぎたヒトに対する選択である。

高齢生存者の生き残り術として、身体感覚を含め、認知機能(e.g. 記憶、コミュニケーション)の高度維持が必要。脳の加齢・健康な加齢減少要因がこのことと関連している。

脳の画像化技術により60歳までは脳の質量は維持されており、この年齢までは一般的に有意な現象は診られない。脳の質量と認知機能パフォーマンスは生殖可能期間後或いは後期において重要ということになる。“cognitive reserve hypothesis”は脳の質量増加と認知機能改善が脳の老化や痴呆発症蓋然性を減少することにつながるであろうという仮説である。

Am J Hum Biol. 2005 Nov-Dec;17(6):673-89)

Association of Life Activities With Cerebral Blood Flow in Alzheimer Disease
Implications for the Cognitive Reserve Hypothesis Arch Neurol. 2003;60:359-365.




運動をしないsedentaryな人はなぜ・・・認知機能低下という答えはクリアカットでないようだ。

それにしても、高齢者でも男女比があるのはなぜ?

・・・

by internalmedicine | 2007-04-27 08:26 | 運動系

 

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