肥満と労務災害補償

高度肥満者を雇用する場合は、それなりのコスト増大する
職場での事故に関わる労務災害補償増大、労働喪失コストなど関わることとなる



Obesity and Workers' Compensation
Results From the Duke Health and Safety Surveillance System
Arch Intern Med. 2007;167:766-773.
【序】 肥満者は合併症と医療サービス使用増加する。労働の代償への影響について多く知られてない。BMIと労働賠償要求、コストの関連、喪失労働時間の相関を調査

【方法】 後顧的コホート研究
11728名の医療および大学雇用者(34858フルタイム相当[FTEs])は、1997年1月1日から2004年12月31日まで少なくとも一回の健康リスク評価が行われた
賠償要求 、関連するコスト、労働喪失日数、BMI、性別、年齢、民族・人種、喫煙状態、労働期間、労働グループ
影響した身体部分、疾患・傷害の性質、疾患・傷害の原因を調査

【結果】 BMIと損害賠償率は線形関係あり
肥満分類III(BMI 40)の労働者では11.68/100FTEs
推奨体重の労働者では5.80


損失労働時間の影響は
労働喪失日数 (183.63 vs 14.19 lost workdays per 100 FTEs)
医療費要求コスト($51 091 vs $7503 per 100 FTEs)

補償要求コスト($59 178 vs $5396 per 100 FTEs)


BMIに影響される要求として、下肢、肘、手、背と関連あるものが多く、頭痛、炎症、ねんざ・筋違い、打撲、転倒・スリップ、つり上げ、過労である。

肥満と高リスク労働の組み合わせは特に有害

【結論】 健康的な体重を維持することは単に労働者にとって大事というだけでなく、BMIが労務外傷に強い影響を与える労働者にとって高度の重要性をもつ

全労働環境を安全にする一般的な介入を完遂すること、食事・運動をターゲットとした職場プログラムは発展され、評価されるべきである



例の職場での腹囲測定開始になりそうで・・・・
気をつけて!メタボリック予防、職場健診で腹囲測定実施へ

 厚生労働省の労働政策審議会安全衛生分科会は25日、労働安全衛生法で義務づけられている職場健診に、メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)の指標となる腹囲の測定を加えることが「妥当」とする答申をした。


 来年4月から腹囲測定が義務づけられることになる。

 腹囲測定については、同省の検討会が3月、「脳・心疾患を予防する観点からも必要」との報告書をまとめたが、経営側は、「予防には、労働者本人の自覚と取り組みが不可欠」などと反発していた。

 25日の答申では、「事業者の健診費用の負担が増すことのないよう簡易な測定方法について周知を徹底する」という経営側の意見が添えられた。同省も、細身の人は測定を省略したり、着衣の上から計測したりすることを認める方針。
(2007年4月25日20時26分 読売新聞)



BMIじゃなく、腹囲測定の意味づけが私にはよくわからないし、そのコストはどうも検診側というか、委託された医療機関への持ち出し要求のようである。

日本におけるメタボリックシンドローム迷走は、官僚と一部偏執的な研究者と軽薄なマスコミにより住民検診・職場検診などその裾野が広がってしまった。科学的根拠は貧弱なまま・・・

ただ、肥満対策は、個人の健康問題を超えて、労務上の問題であることが今回紹介の論文でも明らかとなっている。

by internalmedicine | 2007-04-29 14:51 | 運動系  

<< Bystander Effect 服用せず異常行動も11人 2人... >>