かかりつけ患者死亡後判断・・・死亡診断書? 検案書?

24時間以内に患者さんをみてなければその方が死亡された場合死亡診断書を公布できないのではないかという疑問が各医療系MLのFAQとなっているようです。
2年以上続いている医療系MLは4つほど入ってますが、そのすべてでこの話題が出ています。

“死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルで解決しているようです(”参考)。
訪問診療していた、あるいは外来通院中のかかりつけの患者が患家で死亡した場合で、死亡に医師が立ち会っていないとき異状死亡でなければ、死亡診断書でよいというのが一般的な回答となります。




ところが、問題は医師法第20条なのですが・・・
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医師法第19条 診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。2 診察若しくは検案をし、又は出産に立ち会つた医師は、診断書若しくは検案書又は出生証明書若しくは死産証書の交付の求があつた場合には、正当の事由がなければ、これを拒んではならない。 

第20条 医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。

第21条 医師は、死体又は妊娠4月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない。

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とあり、この20条の「但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない」が、どこにかかるかが問題となるわけです。


法律>マニュアル・・・・だろうという部分があり、ほんとにそれで大丈夫なのと医師たちは疑問に思うわけです。


で、FAQとなる・・・・



条文通り、自然にみれば、死亡診断書は24時間以内に受診がなければ診断書がかけないととれます。故に、かかりつけなどで病状・死因が明らかで、病死でありと医師が判断しているにかかわらず、24時間以内の受診がない場合は死体検案書を公布することになります。


ところがこのサイトでは
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医師法第20条によれば医師が死亡診断書を発行できるのは
・死亡に立ち会った場合
・最終診療後24時間以内に当該傷病(その傷病と直接死因との間に因果関係がある場合を含む)で死亡した場合
のいずれかである。ただし24時間以上経過した場合でも改めて死体を診察し,診療していた傷病で死亡したと判断されれば死亡診断書を発行できる。
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ここでも、「ただし・・・」がありますが・・・^^;


介護保険制度導入などで、最近そのケースがおおくなったであろう在宅看取りなどの場合は面前で死亡を確認する場合は死亡診断書の件・・・
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たとえば2日前に往診・在宅診療を行っていたにもかかわらず、朝方死亡されているのを家族が確認し、連絡があり、患者宅で死亡を確認した場合・・・
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厳格な解釈で、この場合は死体検案書という主張のサイトもあります。

もっともこの主張でも、死体検案の結果,死因が明らかで事件性もないとなれば死体検案書が発行されるとかかれてますが、“医師は事件性であるかないかを判断できるのであろうか?”という疑問も出てきます。


ずいぶん前ですが、このようなケース(私が医師として診療しており、定期的な受診があり死因が明らかで、事件性もないと私自体が判断したケース)で警察に電話連絡して、「“死亡診断書”でよいですか?」と聞いたことがありましたが、そのときは「死亡診断書にしてくれ」と警察から言われました。この場合は、警察に“事件性無し”というお墨付きをもらうためでした・・・


最近の最高裁判例は、法律家の論点は医療過誤に関わる医師の場合、憲法上の権利である「何人も自己が刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したもの」が免責されないという人権上の特異的判決に目がいくのですが・・
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最高裁第三小法廷平成16年04月13日判決(平成15年(あ)第1560号 医師法違反,虚偽有印公文書作成,同行使被告事件)
「要旨」としては、以下の2点が記載されています。
 1 医師法21条にいう死体の「検案」とは,医師が死因等を判定するために死体の外表を検査することをいい,当該死体が自己の診療していた患者のものであるか否かを問わない
 2 死体を検案して異状を認めた医師は,自己がその死因等につき診療行為における業務上過失致死等の罪責を問われるおそれがある場合にも,医師法21条の届出義務を負うとすることは,憲法38条1項に違反しない
(引用:http://fujita.way-nifty.com/lawothers/
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ここで、曖昧だった「検案」という事例の定義が、“自己の診療していた患者のものであるか否かを問わない”とかかれていて、


このサイトの“24時間以上経過した場合でも改めて死体を診察し,診療していた傷病で死亡したと判断されれば死亡診断書を発行できる。の根拠はなくなったのではないかと考えております。

ますます混沌としているのですが・・・

さしあたりは、“自己の診療していた患者のもので”あっても“死体検案書”を書くべきと判断しております。事件性の有無は専門家に任せるという意味もありできれば警察に一報をいれておくのが無難では・・・


在宅死を介護保険などでは推奨しておりますが・・・法的整備などは遅れているのではないかと・・・私は思っているのです・・・

すくなくくとも、経験有る医師でさえ、解釈がさまざま・・・


「異状死体」でない限り、従前の解釈のままでよろしいのでしょうか?
「異状死体」であるかどうか、「検案」し「異状死体」でないと「診断」した場合は「検案書」?「診断書」?


自信がなくなってきております。


<参考>
異状死体・死体検案
「異状死」ガイドライン

by internalmedicine | 2004-06-30 11:40 | 医療一般  

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