思春期メタボリックシンドロームは診断として安定したものではない
2007年 05月 05日
小児メタボリックシンドローム の診断基準を決めたそうだ
、(1)脂質は中性脂肪一dl中一二〇mg以上または善玉コレステロール一dl中四〇mg未満(2)空腹時血糖一dl中一〇〇mg以上(3)血圧が最高(収縮期)一二五mmHg以上または最低(拡張期)七〇mmHg以上―とした。腹回り八〇センチ以上、かつ、ほかの二つ以上を満たすと“小児メタボリックシンドローム” (熊本日日新聞2007年2月21日付夕刊メディカル)ということだそうで・・・
だが、一度診断されても、2-3年後に半数がなくなり、そして病気でないものも同年齢の5%新規に病気なる・・・そんなものが病気といえるのだろうか?・・・と、皮肉を言いたくなる・・・そういう報告。
メタボリックシンドロームの構造は思春期と成人で類似しているということが要因分析では示唆される。しかし、思春期は強化的な身体的な変化の期間であり、故に、代謝的な構造や臨床的なテゴリー分けが果たして安定なのかは不明なため調査されたもの
Instability in the Diagnosis of Metabolic Syndrome in Adolescents
(Circulation. 2007;115:2316-2322.)
3年フォローの1098名のデータ解析、研究開始は学校の研究(2001-2002)
8つのメタボリックリスクの解析とフォローアップにてその要因および臨床的カテゴリー分けの安定性をみたもの
メタボリックシンドロームはAHA( American Heart Association/National Heart, Lung, and Blood Institute definition for adults)、pediatric AHA(modified AHA definition used in prior pediatric metabolic syndrome studies)、IDF(International Diabetes Federation)で定義
We found that factor structures were essentially identical at both time points.
しかし、臨床的カテゴリー化は安定したものではなかった
ベースラインでメタボリックシンドロームであった思春期の約半数は用いた定義に従いフォローアップ時でのメタボリックシンドローム診断された率が少なくなっていった。
pediatric AHA=56% (95% CI 42% ~ 69%), AHA=49% (95% CI, 32% ~ 66%), IDF=53% (95% CI, 38% ~ 68%).
診断される率が次第に少なくなることに加え、新規に診断されるものも同定される
累積頻度は
pediatric AHA=3.8% (95% CI, 2.8% ~ 5.2%); AHA=4.4% (95% CI, 3.3% ~ 5.9%); IDF=5.2% (95% CI, 4.0% ~ 6.8%).
Prevalence of the Metabolic Syndrome in American Adolescents
Findings From the Third National Health and Nutrition Examination Survey
(Circulation. 2004;110:2494-2497.)
pediatric MetS using criteria analogous to ATP III as 3 of the following:
(1) fasting triglycerides ≧1.1 mmol/L (100 mg/dL)
(2) HDL <1.3 mmol/L (50 mg/dL)、15-19歳男性は例外で1.2 mmol/L (45 mg/dL)とする
(3) 空腹時血糖 ≧ 6.1 mmol/L (110 mg/dL);
(4) ウェスト周囲経 >年齢・性別毎の75パーセンタイル
(5) 収縮期血圧>性別、年齢、身長の90パーセンタイル
小児のメタボリックシンドロームは決して増えないというロジックでふれたが、メタボリックシンドロームの定義の上で、ウェスト周囲径のみが突っ走っている状態がある。これは、90パーセンタイル程度にしてしまっていることでも現れている。これではほんとにメタボリックシンドロームは横断的に一定の確率に収束してしまう、偏差値疾患になってしまうのである。
さすがに、AHAガイドラインはそこのところが少しはわかっているようである。75パーセンタイル程度のこの部分をひろげているのである。
日本の小児メタボリックシンドロームは、腹囲に関するイメージにとらわれすぎて、本来の目的を失っているのだろう。
腹回りだけで、メタボとか決めつけて、病気を作って遊んでいるのは、政府、馬鹿マスコミだけでなく、医者も・・・・小児メタボリックシンドロームについても悪影響が及んでいる。
それにしても、不安定な疾患群を確立した症候名としてよいのだろうか?
これでは、医者がもうけたいために病気を作り上げたと言われても、この疾患名に関しては否定ができない。実際には国は医療費の自己負担増加へ使おうとしているのだとおもわれることを旧厚生省役人の教授様が述べているのである。
再掲する・・・
新しもの好きの偉い先生たちと役人どもが、これを縦に生活習慣病全般を医療保険制度から排除しようとする動きとつながっている。
(生活習慣病などのリスク要因とされる「喫煙」「肥満」「運動不足」の三つ全部に該当する人は、全く該当しない人に比べ医療費が4割余り高くなることが6日、住民約5万人を9年間追跡した厚生労働省研究班(班長・辻一郎東北大大学院教授)の調査で分かった。http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060506/eve_____sya_____002.shtml)(http://intmed.exblog.jp/3585506/)
総合医で医者が右往左往している間に、こうした不誠実な横文字病名が一人歩きし、医療の本道と異なる方向に多くの無駄な金銭や時間が垂れ流しされつつある・・・嘆かわしい時代だ
"検査値異常≠病気”ということすらわかってない厚生労働省研究班
厚労省の研究班によると、小児の場合、腹回り八二・五センチ以上を境目に、さまざまな検査値の異常が増えることが確認されている。
ある番組ではあいもかわらず、体脂肪計とやらで医者が絶対的比較で説明していた。別に肥満という区切りで十分な子供にである。

それと、また、低インスリンダイエットと・・・
言うなら、"Low–Glycemic Load Diet"だろうし
Effects of a Low–Glycemic Load Diet on Resting Energy Expenditure and Heart Disease Risk Factors During Weight Loss JAMA. 2004;292:2482-2490.
さらに、これに対する確たる批判エビデンスが出現したのである。
↓
後日
by internalmedicine | 2007-05-05 14:46 | 動脈硬化/循環器