ウェスト径は糖尿病発症リスク予測として果たして良い指標か?

ウェスト径というのは内臓肥満を見つけるのに簡単で、信頼できる指標で、糖尿病や心血管・卒中などのアウトカム改善への指標になるだろう・・・という(いろんな人たちの)願望的指標である。

たとえば、
閉経後女性ではウェスト径が大きさは高インスリン血症と高TG血症に相関があり、BMI24-28程度はウェスト径が疾患リスク増加と相関する
International Journal of Obesity (2001) 25, 1183-1188
・・・という論文がウェスト径が重要ということになるのだろう。


だが、現実にはなかなかそうは簡単に行っていない・・・・

メタアナリシスの糖尿病頻度pooled相対リスクでは、BMI:1.87 (95% confidence interval (CI): 1.67, 2.10)、ウェスト径 1.87 (95% CI: 1.58, 2.20)、W/H比 1.88 (95% CI: 1.61, 2.19) で、3つの指標に差があまりない
Epidemiologic Reviews  May 10, 2007


次の論文は、横断的に調べたときに、糖尿病ともっとも関係の深い肥満指標はどれか?・・・というもの・・・上記メタアナリシスと目的は同様のような気もするが・・・
Which Obesity Index Best Explains Prevalence Differences in Type 2 Diabetes Mellitus?
Obesity 15:1294-1301 (2007)

San Antonio(メキシコ系アメリカ人、非ヒスパニック白人 n=2839)、メキシコ・シティー(n=2233)・スペイン(2161)横断的研究

糖尿病患者を同定するAUC解析を行った。そして、糖尿病頻度の違いをロジスティック回帰分析にて評価

ウェスト径とBMIのAUCは同等
しかし、メキシコ出身ではウェスト径のAUCがより大きい(Mexican men, 0.594 vs. 0.549, p = 0.008; and women, 0.605 vs. 0.557, p = 0.002; Mexican-American men, 0.648 vs. 0.600, p < 0.001; and women, 0.744 vs. 0.693, p < 0.001).

AUC比較でW/H比はウェスト径より意味があるが、統計的有意差はメキシコ系女性 (0.628 vs. 0.613, p = 0.044)、メキシコ系アメリカ女性(0.774 vs. 0.758, p < 0.001)、スペイン女性(0.734 vs. 0.715, p = 0.039)のみ

どの肥満指数も糖尿病頻度を説明するのに優れているとはいえなかった。



BMIは根本的にはかるのだから、別にわざわざウェスト径をはかる必要もないと思うのだが・・・医療機関や検診機関の持ち出しだから別にどうでも良いじゃないか・・・という行政側の考えなんだろう。

いずれにせよBMI無視のウェスト径を主体とした調査ってのは非科学性がつきまとう・・・

by internalmedicine | 2007-05-15 17:31 | 動脈硬化/循環器  

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