糖負荷後高インスリン肥満・過体重では低炭水化物食効果大:肥満食事療法個別化の兆し?

個々の生理的特性が異なることで、食事介入の減量へのアウトカムはばらばらになる可能性がある。low-glycemic loadとlow fat loadという区別、内容をみると、炭水化物を減らす食事にするか、脂質を主に減らす食事にするかで、インスリン分泌が肥満若年者にとってどう影響するかを検討したところ、インスリン分泌の多い人たちは、体重減少・体脂肪比率減少効果の影響がでやすい。すなわち、食後インスリン濃度の高いひとたちに対して炭水化物を押さえた方が減量・体脂肪減少効果が出やすいようである。


ただ、低炭水化物食はHDL、TGは改善するが、LDLに関して言えば低脂肪食が好ましいといえる。

今後、食事・栄養指導の個別化というのが望まれるのかもしれない。


Effects of a Low-Glycemic Load vs Low-Fat Diet in Obese Young Adults: A
Randomized Trial
Cara B. Ebbeling; Michael M. Leidig; Henry A. Feldman; Margaret M.
Lovesky; David S. Ludwig
JAMA 2007;297 2092-2102
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/297/19/2092?etoc


【序文】  肥満治療に関する食事の臨床トライアルの結果は一致した結論があるわけではない、それはおそらく研究対象者の間の生理学的違いの可能性もある。

【目的】  2つの一般の食事でインスリン分泌が体重減少に影響を与えるか

【デザイン、セッティング、参加者】
ボストンにおける、ランダム化トライアル
肥満若い成人(18-35歳、n=73)で2004年9月から2006年12月
6ヶ月の強化介入機関と12ヶ月のフォローアップ期間
経口75gブドウ糖投与30分後の血中インスリン濃度でインスリン分泌測定
6、12、18ヶ月時点でアウトカム評価

【介入】 低炭水化物負荷 (40% 炭水化物 と 35% 脂肪) vs 低脂質 (55% 炭水化物 と 20% 脂肪) 食

【主なアウトカム測定】 体重、体脂肪比率(dual-energy x-ray absorptiometry測定)、心血管疾患リスク要因

【結果】体重、体脂肪比率は両群とも全体的変化なし
しかし、経口糖負荷30分後のインスリン濃度に関してはeffect modifierとなりえると判断

18ヶ月後、糖負荷30分後高インスリン濃度対象者(中央値超(57.5 µIU/mL; n = 28))では、低炭水化物食は体重減少の程度大きく(–5.8 vs –1.2 kg; P = .004)、体脂肪比率減少比率が大(–2.6% vs –0.9%; P = .03)である。

糖負荷30分後インスリン濃度中央値未満のケース(n = 28)では両群で有意差無し

糖負荷30分後インスリン濃度は心血管疾患リスク要因に有意な影響を与えていなかった。

すべてのコホートで、血中HDLとTG濃度は低炭水化物食でより改善し、低脂肪食ではLDLコレステロールが改善した。

【結論】 食事減量療法のvariabilityというのは、ホルモン反応の違いが寄与しているのかもしれない。
炭水化物負荷をへらせばインスリン分泌のよい人たちには体重減少に働く。

インスリン分泌にかかわらず、低炭水化物食はHDL、TGに対して良い方向へ働くが、LDLに対しては悪い方向に働く。


Atkins食は極端な低炭水化物食なのだろう。
Lancet(Lancet. 2004 Sep 4;364(9437):897-9.)では、
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1)体重減少の比率はかなり少ない
2)研究対象者が尋常な肥満ではなかった
3)断念率が異常に高い
4)腎臓に対してかなり危険だが、副作用の検討がなされてない
5)飽和脂肪酸の過剰摂取の心臓への影響に関して検討がなされてない
6)短期的研究で1年後は体重がもとにもどるので、よい効果であるはずがない
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・・・という指摘があった。

極端でない低炭水化物食&糖負荷後インスリン濃度による効果予測判定というのが今後減量など目的の食事療法による栄養指導の主流となるのだろうか?・・・今後の検討が待たれる

by internalmedicine | 2007-05-16 07:25 | 動脈硬化/循環器  

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