不安は冠動脈疾患の予後を悪くする

昨日、NHKの報道系番組を見ていたら、労務過多のため“心臓発作”を起こしたという話が紹介されていた。記事通りなら、常軌を逸した勤務時間数だ。振り返ると私自身が勤務医として働いていたときは概算してみたらこれに近いもの時間数だったというのも・・・

心臓発作ってのは、心筋梗塞なのか、不整脈なのかよくわからないが・・・


日本の症例対照研究(BMJ 1998;317:775-780 ( 19 September ))で、AMIの補正オッズ比で、毎日の労働時間数と心筋梗塞発生に関してU字型の関係があるという興味有あるデータがある


働かないのも・・・心筋梗塞の悪化要因というのが興味深いのだが・・・

労働時間だけでなくwork stressという面の調査も必要なのだろう。
Work Stressとは、職業上の要求について質問における被験者の反応が高く、意志決定についての質問に関しての反応が低いときと定義されている


Work stress and risk of cardiovascular mortality: prospective cohort study of industrial employees
BMJ 2002;325:857 ( 19 October )
25.6年の平均フォローアップ期間にて、work loadの高低により2.2倍(95%CI 12.-4.2)心臓血管リスクが関わる。
労働に対して報償(低サラリー、社会的に認められないこと、キャリアアップのチャンスに恵まれないことなど)が見合わないことは心臓血管リスク2.4(1.3-4.4)。これは、BMI増加をもたらしてた。
高job stainは、5年フォローアップ時の血中総コレステロール値と相関


・・・など、食行動への影響も示唆し、
Work Stressがメタボリックシンドロームとの相関・・・なる報告にいたる。




NHKのテレビ番組は表層的な解析であった。別に目新しいものはなく、力量不足を感じた。

過労死や超過労働という側面だけで、Work Stressの影響、心理的プロセス、食行動、身体運動、睡眠時間、各臓器への機能・病態への影響などの検討等が必要であることもふれられていない。

そして、過労死や過労に伴う心臓疾患や心臓発作というのを個々で確定するのはまだまだ難しいと思う。



一つの方法として、不安スコアを年次観察するというのも有効なのかもしれない

Anxiety Worsens Prognosis in Patients With Coronary Artery Disease
Journal of the American College of Cardiology Volume 49, Issue 20, 22 May 2007, Pages 2021-2027
515名(平均68歳、男性82%)CAD(冠動脈疾患)患者の心臓専門外来での前向きコホート研究
年次Kellner Symptom Questionnaire調査
プライマリアウトカムは非致死性にMIと全原因死亡率

平均フォローアップ3.4年で、44の非致死的MIと19名の死亡

累積的不安スコアは非致死的MIや死亡リスク増加と相関
不安スコア三分位最大vs最小比較で年齢補正ハザード比は1.97(95%CI 1.03-3.78 p=0.04)

年齢、性、教育、結婚状態、喫煙、高血圧、糖尿病、以前のMI、BMI,総コレステロールを検討した多変量Coxモデルで不安スコアは非致死的MIや総死亡率と相関があり、ハザード比は1.06(95%CI 1.01-1.12 P=0.02)

by internalmedicine | 2007-05-17 11:33 | 動脈硬化/循環器  

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