呼吸困難に対する院外パラメディックスALS

なんでもかんでも、救急というのは早く対処すればよいというものではない

重症外傷患者への挿管には麻酔下挿管が必要で、パラメディカルの挿管に合理性がない”という持論を述べたことがある。

今回の表題の論文の詳細をみれば、小規模都市ではこういうALSは有害性があり、病気によっては余計な介入で死亡率さえ増やしている可能性があるのだ。

日本という国は、万事、合理的にものを考えることができないようだ。アメリカがすべて正しいとおもってる馬鹿な国民がまだ多いのと、財務省のような自分たちの都合の良い制度を持っている国をその詳細を検討することなくごり押しする、そういう複合的なものと、日本の行政が不得意というかそれをさけるのは、自らを評価すること・・・そういったもので日本の医療を含め、国全体が、国民を幸せにしない制度がよりひろく・厚く跋扈することとなった。

お上は自らを自己評価しないため、行き当たりばったりの立法・行政、そして最近は司法判断が続く・・・最大の被害者は、患者・国民である。


アメリカでは呼吸困難を理由に200万人が救急サービスをうけている。成人では救急搬送理由の2番目に多い理由が“呼吸困難”ということになり、約18%を占めているそうだ。アメリカ・カナダの多くの都市で、重症・外傷に関して、ALS訓練を受けたパラメディックス(paramedics)がサービスを提供している。一方、BLS酸素投与、バッグ弁マスク換気、状況によっては気管支拡張剤ネブライザー、ニトログリセリン舌下投与が行われているが、気管内挿管や静注などは行われていない。

呼吸困難に対するパラメディックスによるALSのbenefitはまだ不明であった。
Ontario Prehospital Advanced Life Support (OPALS) Studyが行われており、パラメディックスが標準ALS+気管内挿管+薬剤静注まで行うよう、訓練を受け、救命措置をおこなうことで生存率改善につながるか、あるいは有害事象増加がありえないかを検討したもの


結論から言えば -1.9%ほどの死亡率減少があった。
内容をみると・・・すぐに導入というのは考え物と私は思う。


Advanced Life Support for Out-of-Hospital Respiratory Distress
N Engl J Med. Volume 356:2156-2164 May 24, 2007 Number 21
第2相と類似した背景:8138名対象
第1相では、ALS訓練されたパラメディックスにより治療されたものは無し
第2相では、56.6%が治療をうけた
気管内挿管を1.4%に施行
静注は15.0%に施行


第2相では、症状改善目的のサルブタモール使用量、ニトログリセリン舌下投与が著明増加。

死亡率は14.3%→12.4%へ減少 (absolute difference, 1.9%; 95% CI 0.4 ~ 3.4; P=0.01)

BLS相→ALS相で、補正オッズ比1.3(95%CI 1.1~1.5)


都市規模による死亡率比較
<3万             2.2% (-9.1 ~ 13.6%)
3万~10万未満      4.4% (0.4 ~ 8.3%)
10万~20万未満     -4.7% (-8.5 ~ -1.2%)
20万から50万未満    -2.3%(-4.7 ~ 0.2%)
50万超 
           ー3.5%(-6.4 ~ ー0.8%)


退院時診断比較
うっ血性心不全 -4.2%(-7.2 ~ -1.1%)
COPD      -0.2%(-3.1 ~ -2.7%)?(※原文誤記と思われる、おそらくー3.1~+2.7%)
肺炎       -3.7%(-7.8 ~-2.8%)
喘息       +1.0%(+0.5 ~ +1.3%)



人口10万人程度の都市規模でないと、リスクが大きい!

疾患によっては、死亡率増加。このことは原文でほとんどふれられていない。
喘息の院外状況でのβ刺激剤投与はPEFを改善するが、死亡率改善にはつながらないという、小規模報告が他にある。β2刺激剤が極度のnear fetal asthmaの短期予後を改善せず、診毒性さえ増す可能性があることと、事前に自らが気管支拡張剤を使っていた可能性もあると思う。日本でもPTによるSqueezing+β2刺激剤投与が試されていたと思うが、この件に関しては慎重に考慮する必要がある。




前報
院外心停止に対する二次救命処置
N Engl J Med 2004; 351 : 647 - 56 )




日本では、言葉狩りが盛んで、ものごとをすべて差別ととらえる傾向があり、パラメディックというだけでかみつくんだろうか?

ところで、日本でも救命救急士による挿管失敗事例が発生したとのこと
救命士が医療事故…名古屋:http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070508ik05.htm
気管と誤り食道に挿管

 名古屋市消防局は7日、瑞穂消防署の救急救命士(37)が、女性患者(68)の気道を確保するためのチューブを、気管と誤って食道に挿入する医療事故があったと発表した。

 女性は心筋梗塞(こうそく)で死亡しており、市消防局は、医療関係者などで構成する第三者機関を設置し、事故と死亡の因果関係を調べる。総務省消防庁は「救急救命士によるチューブ挿入の際の医療事故は聞いたことがない」としている。

 同市消防局によると、5月1日午前0時5分ごろ、女性患者の長女から「母親が息ができなくなっている」と119番通報があり、救急隊員ら計7人が女性のマンションに駆けつけた。この救命士は女性の心肺停止を確認後、医師の指示を携帯電話で受けながら、応急処置としてチューブを口から挿入した。女性は約1時間後、搬送先の病院で死亡が確認され、医師がチューブを抜こうとした際、ミスに気付いた。

 この救命士は、2005年8月に資格を取得し、今回の挿管が2例目。「食道と気管を見誤った可能性がある」と話しているという。
(2007年5月8日 読売新聞)


参考:救急救命士の救命活動について ―気管挿管の問題など―


はAEDなどbystander心肺蘇生を勧めている一方で、報告書(非医療従事者による自動体外式除細動器(AED)の使用のあり方検討会報告書:pdf)では、
“医師法違反の問題に限らず、刑事・民事の責任についても、人命救助の観点からやむを得ず行った場合には、関係法令の規定に照らし、免責されるべきであろう”
という、無責任な記載のみ。さらに医療資格を持つ人がAED使用刷るのが望ましいと書きながら、医療従事者については「法違反に問われない」、「損害賠償責任を問われない」という免責をあきらかにしていない

もっと怖いのは、医療業務を行っているものに対する、bystader BLS+ACLSの結果責任においていつ刑事責任追及・民事賠償を請求の可能性である。医師などの業務従事者のbystander BLS+ACLSなどは業務上過失として訴追されるリスクが常にあるのである。

良きサマリア人になるより、知らぬふりの一般人として訴追リスクを避ける!
・・・そういう選択をして何が悪い・・・・といえば、世紀の低脳新聞:毎日などが騒ぐだろうか?

by internalmedicine | 2007-05-24 08:48 | 医療一般  

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