家庭など頻回血圧測定による有害性

家庭や職場、役所・役場、コミュニティーセンターなどに血圧測定器・・・好ましいことなのか?

家庭血圧測定の指針 (日本高血圧学会)なるものが発表されている。

自己血圧測定についてある報告(Can J Cardiol. 1995 Nov;11 Suppl H:18H-22H. )では

利点・血圧目標値の達成率向上
・治療adherence改善
・医療機関受診の減少

リスク
・自己血圧測定に適さない人たちがいる
・不安増加するものがいる



フリーアクセス世界一の日本では自己血圧測定が受診頻度増加につながるか?
特定の患者ではかえって受診回数増加を促進している部分がある。

患者の不適切な知識や不適切な測定、不正確な血圧計が世間では多く、患者の健康に被害を与えているという報告Blood Press Monit. 2001 Jun;6(3):133-8.)がある。


AHA Scientific Statement(Hypertension. 2005;45:142.)では
高齢者はWCH(白衣高血圧)、ISH(収縮期高血圧)、pseudohypertensionの頻度が高い。血圧は腰掛けて測らせること、各受診毎に2回以上測定し、平均値をとること
規律性低下津も生じるので起立時の血圧測定も行うべきで、特に糖尿病合併例で多い。
朝方、食後、起立時に特に血圧上昇しやすい。
降圧剤投与において自己測定はきわめて役立つ。ABPMは時にホルターECGとともに行うことで意識消失発作や夜間呼吸苦のようなものを評価可能となることがある。


・・・・と肯定的意見ばかり書かれているが・・・

偶発的な血圧測定による異常値により不安感をもたらし、さらに不安感により血圧値上昇・・・という患者を毎日何人診ていることか・・・・

市井のみのもんた(みょーに自信を持って、うそ健康情報を垂れ流す世間に良くいる人々)が「肩こりがあれば血圧、頭痛あれば血圧・・・元気が無ければ血圧」と、Quacker(y)となり、時に有害性を伴う情報を垂れ流す。



馬鹿厚労省は、“指用の血圧計は不正確である。手首血圧計は使用が容易であるが、水柱圧補正が困難であること、手首の解剖学的特性から動脈の圧迫が困難である場合があり不正確になることが多く、現状では家庭血圧測定には、上腕用を使用する”と言いながら医療用具承認番号をつけているのである。・・・相変わらず、現行不一致の馬鹿役所である。


頻回の血圧測定を、自宅2回のみの自己測定に減らすよう指導し、一時的な血圧異常値にびくびくしなさんな!・・・と指導して、安定している事例を症例呈示

【症例】
ある高齢女性
夜間時間外受診から当院通院。
きっかけは、血圧自己測定高血圧(180/100以上)として気分不良のため受診
社会歴:高齢夫婦二人暮らし
夜間診療体制を思うと不安になるとこぼす

来院時血圧:180/110程度

聞き取り、血圧についてのリスク説明
抗不安薬投与にて経過観察
不安時ソラナックス(R)頓服指示


自己血圧測定の推移
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【考察】この人は“血圧の異常 イコール 即、死の不安”を感じている。ベースに高齢化に伴ううつ、老夫婦二人暮らしを含む社会的・経済的・人的不安、夜間・休日医療状況に対する不安がある。
アメリカの心身医学学会の円卓会議(J. Amer. Psychoanal. Assn., 1:562-574:http ://www.pep-web.org/document . php ? id = apa . 001 . 0562a)で、、「“高血圧”と“血圧という数値を上げている”のとは別の疾患プロセスであり混同すべきでないことを再認識する必要があるとした。“vasomoter instability”という現象を疾患と混同してはならない。Cannonの情緒と身体反応の概念の誤解からはじまっている。最小動脈の末梢血管抵抗増加というのが仮説の始まりである」としている。
こういった高血圧とは別の心的プロセスがはたらく病態に対して、家庭内血圧測定や頻回の偶発的血圧測定がなされることが果たして安全なのだろうか?・・・血圧高値≠高血圧であることをもう少し気に留める必要があるだろう

 「職場高血圧」・「仮面高血圧」という造語にご用心 ← こういうミスリードを誘発する医者は私は問題あると思うのだが、相変わらず全国で氏の講演会は多い





家庭血圧(home blood pressure:HBP)http://www.lifescience.jp/ebm/sa/2003/0303/index9.html

Self-Measurement of Blood Pressure at Home in the Elderly: Assessment and Follow-up (SHEAF) study


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by internalmedicine | 2007-05-30 09:12 | 動脈硬化/循環器  

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