NSAID潰瘍予防:薬剤服用遵守性が大事・・・日本では役人のせいでその前提すら実行できない

日本の公的保険医療は、財務省主導であり、金をかけなければよい医療という妄想にとらわれている。そのため、現場の医者たちは、保険請求ルールと実情とかけ離れた臨床ガイドライン、患者家族の強い要望や合併症に対する強い批判などに板挟みになっているのである。

高リスク患者に、仮にH2RAやPPIなどを処方すれば、政府・メディアから過剰請求などと言われ、サイトテック(R)を処方すると患者から副作用でたしなめられ、少量で遠慮すると添付文書を守ってないと医療過誤のごとく患者から攻められ、保険者からは担当規則違反だと言われ・・・じゃぁーどうすりゃいいのよ・・・と・・・こういうことが放置されているのは臨床を知らないものたちが現場からかけ離れたルールを決定していることがその根本だと思う。

NSAIDと潰瘍の問題は、医療担当規則が長い間臨床の場を無視して放置されて続け、過剰請求などとされ、医者の批判へ問題がすげ替えられている。この問題は制度不備であるのだが、医者批判材料としてマスゴミの餌食となっている。

Cochrane data baseでは10年以上前から同様な結論
Misoprostol(日本ではサイトテック(R) ) 800 ug/日は400mg/日より有効性が高く、内視鏡的予防効果としては、胃潰瘍 (RR=0.17)と十二指腸潰瘍(RR=0.39)であり、十二指腸潰瘍に対して用量効果依存関係がみられる。ただ、下痢が全投与量に認められ、400mg/日より800mg/日の方が有意に多い。故にこの薬剤hが潰瘍予防に関して唯一分権化された薬剤である。
H2RAの標準量は内視鏡的十二指腸潰瘍(RR=0.36; 95% CI: 0.18-0.74)には有効だったが、十二指腸潰瘍治療には有効でない(RR=0.73; 95% CI:0.50-1.09)。倍量のH2RAとPPIsが内視鏡的十二指腸(RR=0.44; 95% CI:0.26-0.74)・胃潰瘍リスク(RR=0.40;95% CI;0.32-0.51)減少に有効で耐用性はmisoprostolより有効


厚労省御用達ガイドライン(MIND参照)でも・・・
【3 ステートメント】
[1] NSAIDは可能ならば中止し通常の潰瘍治療を行う。 グレードB、レベルII
[2] NSAIDの中止が不可能ならば、プロトンポンプ阻害薬(PPI)あるいはプロスタグランジン(PG)製剤により治療を行う。 グレードB、レベルII
[3] NSAID継続下での再発の防止には、高用量のH2受容体拮抗薬、PG製剤あるいはPPIが有効である。 グレードB、レベルII
[4] H. pylori 除菌が潰瘍治癒、あるいは再発防止に有効とのエビデンスはない。 グレードC、レベルII
[5] 採用されたエビデンスは欧米のものがほとんどで、日本人でのエビデンスはない。


以上のように、まずはサイトテック錠を利用する事となると思うのだが、残念ながら、この薬剤自体の副作用のためなかなか処方受容してもらえない。となると、現実的に処方できるのはH2遮断剤・PPIということになるのだが・・・日本の保険では、NSAID処方時に防御因子増強剤利用することを渋々認めている程度(・・・これだって保険者によっては怪しい)
第一、“防御因子増強剤の予防効果は不十分”なのだし・・・

NSAID潰瘍予防にH2RAやPPIを使うのが前提となっている論文
最近話題の患者側要因としての薬剤adherenceとその後のアウトカム・・・

Adherence to gastroprotection and the risk of NSAID-related upper gastrointestinal ulcers and hemorrhage
Alimentary Pharmacology & Therapeutics 

背景: 上部消化管 (UGI) 合併症はNSAID治療のよく知られた合併症で、高リスク患者の予防を必要とするもの
NSAIDの胃保護薬剤(GPAs)のadherenceが至適な状態に至ってない示唆されている。

目的: 高リスク患者でのGPAs(PPI or H2受容体遮断剤)へのadherenceとNSAID関連UGI潰瘍・出血の相関について検討

方法: 住民ベースのネスティド・ケース・コントロール研究
少なくともNSAID関連UGI合併症に対する一つ以上のリスク要因をもつNSAID使用者のコホート、オランダのIPCIデータベース(1996-2005)
GPAsへのadhrenceはGPA処方に対するPDC(proportion of NSAID treatment days covered:NSAID治療日数カバー比率)で計算

結果: 非選択的NSAID処方患者の15%がGPAsを投薬され
NSAID関連UGI合併症はadhrence10%現象毎に16%リスクが増加する。

PDC>80%の患者に比較して、20-80%のPDC、<20%のPDC患者ではそれぞれ 2.5-倍 (95%CI: 1.0–6.7) 、 4.0倍 (95%CI: 1.2–13.0)リスクが増加する


結論: NSAID高リスク患者でのGPAsへのadhrenceとUGI合併症の強い相関が認められた



日本なんて、財務省・経団連言いなりの厚労省が、国民の健康そっちのけで、医療水準を率先して下げて、その結果生じた悪いことは現場に責任押しつけ・・・自分たちはキャリアを重ねて、天下り・・・



ちなみにH2RAの予防効果は通常量の2倍でのみ有効性の報告

by internalmedicine | 2007-06-01 09:33 | 消化器  

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