ホモシステイン仮説の一部復活?:卒中に関しては葉酸有効・・・さらなる混迷へ

葉酸というよりに関しては懐疑的なのだが・・・ビタミンで心筋梗塞二次予防を悪化(ホモシステイン仮説の否定)などと書いたが、ビタミン推進論者は一次予防&卒中だけにターゲットを絞ってきたようだ。

いくつかの大規模ランダム化トライアルでは葉酸によるホモシステイン減少はCVDアウトカムを改善しない( JAMA 2004; 291: 565-575 Clin Cardiol 2007; 30: 50. )し、ビタミンBと併用した場合は、CVDリスクを促進する( N Engl J Med 2006; 354: 1578-1588. 、 N Engl J Med 2006; 354: 1567-1577.)という。


二次予防より一次予防の方が効果があるというのはにわかに信じがたい。

だが、
Simvastatinによる一次予防は卒中予防リスク25%(Heart Protection Study)なので、2年でこの効果が明らかとなったが、脳血管障害を有する場合は同様に効果がなかった
という報告があり、同程度の一次予防効果があるというのであればやや現実味があるのだろうか?


この新しい知見は、一次予防と二次予防の違い、動脈硬化疾患のうちでも効果が異なる可能性などより混迷を深めたと私は思うのだが・・・


論文の冒頭の記載から
1969年以来、硫黄含有アミノ酸である、ホモシステインが動脈硬化と関係していると考えられ、その時から、血中ホモシステイン値増加と心血管疾患リスク増加の関係が冠動脈疾患・卒中・DVTの独立した因子と考えられてきた。この仮説は症例対照研究から支持されていた。
遺伝研級や前向き研究のメタアナリシスによりさらにこの仮説が支持されてきた。しかし、一致しない結果が発表され、ランダム化研究では心血管リスク減少が確認できなかった。


最近の臨床トライアルと観察研究には不一致が見られるにはいくつかの考えられる理由がある。
多くのトライアルが二次予防戦略としての検討であり、二次予防より一次予防に効果がある可能性がある。加えて、心血管疾患は多原因性疾患であり、異なる心血管エンドポイントへ葉酸が働く可能性もあった。

HOPE-2では心血管イベントはすべて陰性だったが、卒中リスク減少が24%みられた。
USA・カナダでは、葉酸強化穀類が1998年からはじまっている。ホモシステイン濃度が独立した卒中因子なら、この処置が卒中に関して期待が持てるということとなる。事実USAとカナダでは1998-2002年の卒中死亡率増加の減少が見られるという人口ベースの研究が公表されている。一方、イギリスと・ウェールズ(葉酸強化がなされてない国)では有意な減少が見られない。




Efficacy of folic acid supplementation in stroke prevention: a meta-analysis
The Lancet 2007; 369:1876-1882

葉酸付加は有意に卒中リスクを18% (RR 0·82, 95% CI 0·68–1·00; p=0·045)減少
層別化分析にて特に有用性変化が見られたのは
・36か月以上の投与期間(0·71, 0·57–0·87; p=0·001)

・20%以上の血中濃度減少(0·77, 0·63–0·94; p=0·012)
・葉酸無添加・一部のみの穀類 (0·75, 0·62–0·91; p=0·003)
・卒中病歴無し(0·75, 0·62–0·90; p=0·002)




安全なビタミンとは?・・・卒中のない場合は葉酸+ビタミンBは安全なのだろうか?
ホモシステイン低下から利益を得られるとされる、冠動脈疾患、アルツハイマー病、腎臓病のような疾患での疾患進展寄与因子を考慮して個別化したターゲット治療が必要となるのだろうか?・・・そんなコストベネフィット上いみのあることなのだろうか?




強化ビタミン穀類という国策を選んだ国々にとっては特に深刻な問題を投げかけている。

by internalmedicine | 2007-06-03 11:22 | 動脈硬化/循環器  

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