セレンと喘息 :抗酸化・・・という机上の空論

Office of Dietary SupplementsではSeleniumに関して、微量元素として、抗酸化酵素であるselenoproteinに必須とのこと。フリーラジカルによる細胞障害を予防する可能性がある。ゆえに、がんや心臓疾患発症予防、甲状腺、免疫疾患との関係を指摘。
欠乏に関して・・・seleniumが少ない土壌の中国のようなところでは報告があるが、USではない。欠乏にて心疾患、甲状腺機能低下、免疫系機能低下など報告されている。selenium欠乏そのものが疾患を生じているエビデンスはないが、栄養や生化学、感染ストレスによる感受性増加の可能性がある。
cf.通常の食生活でセレン不足が問題となることは、日本ではほとんどありません。(独立行政法人 国立健康栄養研究所)
欠乏による特異的疾患としてKeshan病(新拡大、心機能低下)、Kashin-Beck病(関節症)、Myxedematous Endemic Cretinismなど


過剰に関して・・・100 μg/dLを超過するような血中濃度の場合、selenosisと呼ばれる病態を呈する。症状は、胃腸症状、脱毛、斑点状爪、にんにく口臭、疲労感、イライラ感、軽度神経障害。US内でも自然発症はまれだが、工業的事故やサプリメント過剰摂取などで生じる。成人では400mg/日を上限にすることで予防可能



上記情報を基礎知識にすれば、この種のサプリメントというのは治験するまでもないような気がするのだが・・・抗酸化という建前になっているため、抗酸化サプリメントの一環としてセレンは利用されている。

seleniumとぜんそくの関係はそれまでわずか24名のトライアルしかなく、197名のRCT・24週投与行ったもの
プライマリアウトカムはQoLスコア、セカンダリアウトカムは肺機能、ぜんそく症状スコア、PEF、気管支拡張剤使用回数


Randomised, double blind, placebo-controlled trial of selenium supplementation in adult asthma
Thorax 2007;62:483-490
対照群に比べ、48%のselenium濃度増加
QoLスコアは治療群で改善、統計的な有意差はなかった(–0.05 (95% CI –0.19 to 0.09); p = 0.47).
セカンダリアウトカムに関しては有意な改善なし





セレンに関して疾患に関するサプリメントの治療的有用性を示すエビデンスは皆無である。
( Int J Hyg Environ Health. 2004 Jan;207(1):1-13.)

βカロチン(RR, 1.07; 95% CI, 1.02-1.11), ・ビタミンA(RR, 1.16; 95% CI, 1.10-1.24)・ビタミンE (RR, 1.04; 95% CI, 1.01-1.07),はそれぞれ、死亡率増加
(JAMA 2007; 297: 831-41)

by internalmedicine | 2007-06-19 08:48 | 医療一般  

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