デトックス・キレーション治療など私的まとめ

デトックス・Detoxは本来体内から有害重金属を排出し浄化することをいうはず(読売新聞)である。しかし、横文字にだまされやすい日本人は、デトックス:Detoxが自然食品販売促進業者などに利用され、レストランや化粧品、エステやお岩盤浴も足湯など関連業の宣伝文句と化している場合がある。


【医療ルネサンス】 「毒出し点滴」大規模検証 (2007年6月12日)などと書かれてるが、EDTAキレーション(CAD)のNHLBIのNCAM)の研究の一環、The NIH Trial of EDTA Chelation Therapy for Coronary Artery Diseaseのことを紹介している。


 私が、頻用するQuackWatch(http://www.quackwatch.org/01QuackeryRelatedTopics/chelation.html)では、このキレーション治療についてもふれられている。“証明されていない効能と不合理な理論”という見解である。

American College for Advancement in Medicine (ACAM)は1973年にAmerican Academy for Medical Preventicsの基金によるもので、このキレーション治療をpromotionする目的の組織だそうで、Cranton's "textbook" を安全で有効性のある投与法としてACAM protocolにされている。
具体的には
EDTA Na50mg溶液/体重kg+ヘパリン、塩化マグネシウムを含む500~1000mlの溶液の点滴であり、局所麻酔(注射部位の疼痛予防)、いくつかのビタミンB、ビタミンC4-20gであり、、3.5-4時間でゆっくりと点滴し、週1-3回行うもの
(上記・・・誤訳かもしれないので信用しないように・・・局所麻酔以下のビタミンをどうするのか不明だし・・・)



臨床トライアルとしては今までのところ、一貫して、Guldager Bら(デンマーク)Guldager BらErnst Eなどと次々に否定的トライアル結果が出されている。

安全性に関して、
Crantonらは600万例の治療で安全性が確立したと書いているが、低カルシウム血症、腎障害、アレルギー(EDTA溶液成分への過敏性)、低血糖、血液凝固障害、うっ血性心不全、肝障害、結核に関してその危険性に関して警告している。低カルシウム血症は、不整脈、テタニー、腎障害、異常出血を生じうる凝固能低下、血栓性静脈炎、塞栓の可能性、インスリンショック、重症の血管炎、自己免疫関連溶血性貧血、掻痒を伴う皮膚炎あるいは全身性湿疹、動脈硬化および慢性疾患患者においては血小板の広範凝集が見られる可能性がある。より重要な考慮点は、微量元素、亜鉛のようなものをキレートしてしまう危険性である。フランスの研究者はEDTA投与後、尿中亜鉛が正常の一五倍に増えたと報告している。補充しない場合は、免疫機能へ重大な影響、前癌的な細胞の遺伝子変異、細胞膜の選択的透過性の低下、膵臓のインスリン可溶性の変化など生じる可能性を記載している。



 副作用に関して亜鉛などのトレースミネラルの不足は深刻のはずで、治験結果がまだだとしても、こんなもの喜んでするなぁ・・・と思うのだが・・・




他のCAMに関してついでに・・・小まとめ

・ 鍼: 変形性関節症 (570) Trial complete; NIAMS
Effectiveness of Acupuncture as Adjunctive Therapy in Osteoarthritis of the Knee A Randomized, Controlled Trial
Ann Intern Med. 2004;141:901-910.blockquote>

だが、Meta-analysis: Acupuncture for Osteoarthritis of the Knee
Ann Intern Med. 2007;146:868-877.では期待効果やプラセボ効果であり、短期効果のみという結論


・ グルコサミン・コンドロイチン: 変形性関節症(1588); NIAMS
Chondroitin Sulfate, and the Two in Combination for Painful Knee Osteoarthritis. New England Journal of Medicine, 2006; 354:795-808.にて全体では疼痛軽減効果なし、中等症から重症の膝痛患者で有効性のある可能性・・・>WOMAC疼痛サブスケールの20%減少を効果ありと判断しているのである。
この程度の差をどう考えるか・・・サプリメントの値段が高ければそのコスト効果は吹っ飛ぶだろう。


・ Ginkgo biloba: 認知症(3073); NINDS,NIA、NIMH

Ginkgo Evaluation of Memory Study(GEM)
Ginkgo Biloba Prevention Trial in Older Individuals
Study start: October 2000; Study completion: July 2009



・ サメ軟骨: 肺癌(756); NCI
生存率改善せず
"A phase III study of AE-941 with induction chemotherapy and concomitant chemoradiotherapy (CRT) for stage III non-small-cell lung cancer (NSCLC) (NCI T99-0046, RTOG 02-70, MDA 99-303)




・ ビタミンE: 前立腺癌(32400); NCI
Selenium and Vitamin E Cancer Prevention Trial (SELECT)
enrollment:2001-2004
7年継続研究



・ St John's wort: 軽症うつ ;NIMH、ODS
大うつでは無効
Drug Therapy to Treat Minor Depression



・ ノコギリヤシSaw palmeetto: BPH ;NIDDK,ODS
自覚的にも他覚的にも改善せず
Saw Palmetto for Benign Prostatic Hyperplasia NEJM Volume 354:557-566 February 9, 2006




ある種・・・・これなんかはまともな方だと私には思えるのは私の頭が東洋的だからか?
瞑想で血圧が下がる (2007年6月13日)


ただ、transcendental meditation 超越瞑想に偏ってるが、座禅と写経とかじゃだめなのか?・・・と思う。だれか、トライアルして下されれば・・・

Effects of a Randomized Controlled Trial of Transcendental Meditation on Components of the Metabolic Syndrome in Subjects With Coronary Heart Disease Arch Intern Med. 2006;166:1218-1224.
超越瞑想群は、収縮期血圧 (–3.4 ± 2.0 vs 2.8 ± 2.1 mm Hg; P = .04)、インスリン感受性 (–0.75 ± 2.04 vs 0.52 ± 2.84; P = .01)、心拍変動 (0.10 ± 0.17 vs –0.50 ± 0.17 high-frequency power; P = .07)を改善する

by internalmedicine | 2007-06-20 14:21 | Quack  

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