定義をごちゃごちゃといじるだけの・・・メタボリックシンドローム
2007年 06月 22日
そもそも特定の疾患が存立するための条件は
・診断に客観性があることなどである。
・診断された群と診断に至らない群にあきらかな臨床的アウトカムの差があること
・診断群に関して特異的治療法があること
・診断に関して病因論的合理性があること
こういうものが明白に説明されれば、わたしのようなわからずやでも、メタボリックシンドロームというものを快く?うけいれるであろう。
だが、メタボリックシンドロームにはいくつかの定義が存在し、根本理念がよくわからない。
特に、バカ役人御用達シンドロームに至っては、腹回りにこだわりすぎて・・・何が何やら?
CVリスクを主体にするのであれば、Framingham Heart Studyなどのリスク層別化だけでじゅうぶんではないか?そして、adipose tissue炎症論を主体に持って行くのなら、このリスク層別化に加えるだけで良いではないか?・・・なぜわざわざこういう定義困難なシンドロームを作り上げる必要があるのか?
たとえば、メタボリックシンドロームを納得させるためにインターベンション後の二次予防効果を示した報告(http://www.jc-angiology.org/journal/pdf/2007/139.pdf)があった。
この図で、A群 vs C群 や B群 vs D群を比較しろ!・・・ということなのである。
B vs D は統計学的有意差無しで、A群 vs C群で比較をしろということなのである。
だが、まってほしい(・・・まるで朝日新聞みたいだなぁ)
メタボリックシンドロームの定義にはTG増加、HDL低下、血圧増加、FPG増加など元来判明していたCVリスクが既に具有されているのであり、正常とメタボリックシンドロームに関して差があってあったり前なのである。むしろ、B vs Dで有意差が出ない方がおかしい。糖尿病というリスクの前ではメタボリックシンドロームという要因がだれかのなんらかの理由でごり押ししているのではないかと・・・邪推?してしまう。・・・・それほど不自然なのである。
同趣旨のことを、“メタボリックシンドロームって・・・そんなにすごいんか?”でも記載した。
このわけのわからんシンドロームは日本のクライテリアを含め複数存在する。
IDF定義
National Cholesterol Education Program (NCEP) Adult Treatment Panel III (ATP III)の定義
NCEP定義は血圧・血糖クライテリアに関するもので、fibratesやニコチン酸を脂質異常症治療へ組み込むような示唆がされている。一方、スタチンがLDLコレステロール低下のため処方されているが、これはHDLやTGにも影響を与える。NCEP定義に低下治療を加えることでメタボリックシンドロームへ影響をあたえるか、IDF定義による患者群とNCEP定義に従った患者群の特性を比較した研究がなされた。
Defining the metabolic syndrome: Resolving unresolved issues?
European Journal of Internal Medicine Volume 18, Issue 4, July 2007, Pages 309-313
2373名の臨床的に血管疾患を有する患者の横断的調査
メタボリックシンドローム定義された患者への脂質低下治療の影響評価
NCEP定義だと41%
NCEP-rev1だと51%
NCEP-rev2だと44%
IDF定義だと52%
NCEP定義のみの患者はIDF定義より低HDLコレステロール、高TG、高空腹時血糖の傾向が高い。
【結論】NCEP定義に脂質低下薬剤追加することにより心血管や糖尿病リスク高値患者群を追加することとなる。
NCEP定義メタボリックシンドロームは、IDF定義のメタボリックシンドロームより、より悪化した心血管リスクを有する群となる
NCEP定義のメタボリックシンドロームはIDF定義より悪化事例?を抽出していることとなるらしい。
CVリスク stratificationで完全に代用できるのでありメタボリックシンドロームの利用価値は皆無なのである。厚労省が単に腹ぼての中年のイメージを利用して目くらましを行っているだけ・・・と私には思える。米国では薬品販促と強く結びついており、脂質治療を行っているという項目までメタボリックシンドロームに入れようとする動きがある・・・というのにあきれてしまう。
by internalmedicine | 2007-06-22 09:51 | 動脈硬化/循環器