男性ホルモンは心臓には有害、呼吸器には有益に働く?
2007年 06月 26日
European Journal of Endocrinology, Vol 156, Issue 5, 585-594
70-89歳男性では、総テストステロン値は性ホルモン結合グロブリン増加とともに増加し、総テストステロン値は減少せずに、遊離テストステロン値は減少する。加齢、BMI、LHは低遊離テストステロン値低下と独立した因子のようである。
男性において、内因性の性ステロイド値は、死亡率に軽度関連しているようである。
以下のデータは、内在性性ステロイド値が早死にと関係することを支持する証拠としては弱いが、性ステロイドによる虚血性心疾患に対する有害作用および呼吸器疾患に対する有益作用による死亡率の関係は今後検討すべき問題であることが判明した。
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Sex Steroids and All-Cause and Cause-Specific Mortality in Men
Arch Intern Med. 2007;167:1252-1260.
年齢補正後、dihydrotestosteroneや性ホルモン結合グロブリン値は虚血性心疾患死亡と相関があり、遊離テストステロン値は呼吸器死亡率と相関あり。
多変量解析にて、高値遊離テストステロン(P=.02)と低値dihydrotestosterone値(P=.04)は有意に虚血性心疾患死亡率と関連有ったが、モデル選択によって消失した。
1SD低値遊離テストステロンの虚血性心疾患への相対リスクは0.80(95%CI 0.64-0.99)
遊離テストステロン値は呼吸器死亡率と関連(P=.002)し、多変量解析で1SD低値は1.90(95%CI 1.24-2.92)のリスク。
総テストステロン値は死亡率と関連無く、性ホルモン結合蛋白も多因子補正後、死亡率との関係は有意でない。
Archives of Internal Medicineはこの話題が大好きなようで2006年8月(Arch Intern Med. 2006;166:1660-1665.)にも同様なテーマの論文掲載で、総括的に・・・低テストステロン値が死亡率増加につながるという報告を記載している。テストステロン低値(<250 ng/dL) vs 正常で、死亡率35% vs 20%という報告である。
低テストステロン値は死亡率増加と関連(ハザード比 1.88 95%CI 1.34-2.63)
5年内死亡者の感度分析にて急性疾患からの影響を最小化するようはたらき、低テストステロン値は死亡率増加と関連していた。
・・・この論文は、Endocrinology&Metabolism News 2006に選ばれていたので、注目されている報告であることは間違いないようだ。
男性更年期として一方的に男性ホルモン補充を商売にするのは再考を願いたい。
(男性更年期のアンドロゲン補充療法・・・・エビデンス無し、リスク可能性大)
最近、ガイドラインができている
Guideline for Male Testosterone Therapy: A Clinician’s Perspective
Morgentaler J Clin Endocrinol Metab.2007; 92: 416-417
やせたCOPD患者へのanaerobic steroid投与は昔から検討がなされているが、理論的には可能性があるが運動耐用能改善報告は確たる者が無く、QOL改善にもエビデンスがない。現在のところこの治療法は時期尚早(肺リハビリテーション・ガイドライン:Joint ACCP/AACVPR Evidence-Based Clinical Practice Guidelines :Chest 2007;131;4-42)とのことである。
・・・この低テストステロン値現象・・・・なんかの結果論を見ているような気がするのだが・・・
Ref)
内因性テストステロン値と認知機能:男性更年期という商売はなりたつのか?
by internalmedicine | 2007-06-26 10:12 | 動脈硬化/循環器