非空腹時トリグリセリド値は独立した心血管リスクである
2007年 07月 18日
非空腹時高トリグリセリド血症が独立した心血管リスクであることの2つのJAMAの報告
1つめは、26年フォローアップの前向きコホート研究で、非空腹時TG異常高値は心筋梗塞、虚血性心疾患、死亡と相関するのではないかという仮説の確認、そして、Nordestgaardらは、非空腹時異常高値TG(>442.5 mg/dL、5 mmol/L)は3つの研究アウトカムにおいて、特に女性において、リスク増加をもたらしたとのこと
Nonfasting Triglycerides and Risk of Myocardial Infarction, Ischemic Heart Disease, and Death in Men and Women
JAMA. 2007;298:299-308.
デンマーク、コペンハーゲンの20-93歳 女性 7587名、男性 6394名
2004年まで1976-1978フォローアップ
メインアウトカム測定:
TG基礎値でカテゴリー化MI、IHD、総死亡頻度比較1 ~ 1.99 mmol/L (88.5-176.1 mg/dL)
2 ~ 2.99 mmol/L (177.0-264.6 mg/dL)
3 ~ 3.99 mmol/L (265.5-353.0 mg/dL)
4 ~ 4.99 mmol/L (354.0-441.6 mg/dL)
5 mmol/L (442.5 mg/dL) 以上
vs
1 mmol/L 未満(<88.5 mg/dL)
結果:
非空腹時TG増加毎に、レムナントリポ蛋白コレステロールも増加
フォローアップ26年、心筋梗塞1793名(女性691名、男性1102名)、IHD 3479(女性1567名、男性 1912名)、死亡7818名(女性3731名、男性4087名)
心筋梗塞に対して
・女性では、1-mmol/L増加後との年齢補正・他因子補正HRs(aHRS)は2.2 (aHR, 1.7)、 4.4 (aHR, 2.5)、 3.9 (aHR, 2.1)、 5.1 (aHR, 2.4)、 16.8 (aHR, 5.4)
・男性では、1.6 (aHR, 1.4)、 2.3 (aHR, 1.6)、 3.6 (aHR, 2.3)、 3.3 (aHR, 1.9)、 4.6 (aHR, 2.4)
IHDに対して
・女性では、1.7 (aHR, 1.4)、 2.8 (aHR, 1.8)、 3.0 (aHR, 1.8)、 2.1 (aHR, 1.2)、 5.9 (aHR, 2.6)
・男性では、1.3 (aHR, 1.1)、 1.7 (aHR, 1.3)、 2.1 (aHR, 1.3)、 2.0 (aHR, 1.2)、 2.9 (aHR, 1.5)
総死亡に対して
・女性では、1.3 (aHR, 1.3)、 1.7 (aHR, 1.6)、 2.2 (aHR, 2.2)、 2.2 (aHR, 1.9)、 4.3 (aHR, 3.3)
・男性では、1.3 (aHR, 1.2)、 1.4 (aHR, 1.4)、 1.7 (aHR, 1.5)、 1.8 (aHR, 1.6)、 2.0 (aHR, 1.8)
2つめは、BansalらがWomen's Health Studyの前向きデータを解析して、空腹時 vs 非空腹時トリグリセリド値と将来の心血管イベントのリスクの相関を評価
非空腹時トリグリセリド値は、将来の心血管イベントのリスク増加と相関し、他の心血管リスク要因、他の脂質、インスリン抵抗性マーカーと別個の独立した因子であることが判明した。空腹時トリグリセリド値はそうではなかった。
Fasting Compared With Nonfasting Triglycerides and Risk of Cardiovascular Events in Women
JAMA. 2007;298:309-316.
セッティング:26509名の健康な米国女性(Women’s Health Study、1992年11月~1995年7月、11.4年のフォローアップ中央値)
メインアウトカム測定:心血管イベントハザード比
(非致死的心筋梗塞、非致死的虚血性卒中、冠動脈再建、心血管死亡
結果:基礎値において、トリグリセリド値は空腹時、非空腹時とも女性において、従来の心臓リスク要因であり、インスリン抵抗性マーカーである。
フォローアップ中央値11.4年で、1001名の心血管イベント (非致命的MI 276、虚血性卒中265、冠動脈再建628、心血管死亡163)で、総発生率1000人年にて3.46
年齢、血圧、喫煙、ホルモン治療補正後、空腹時、非空腹時トリグリセリド値はやはり心血管イベント推定可能
空腹参加者の内、総コレステロール・HDLコレステロール、インスリン抵抗性補正後その相関は弱まった(三分位増加毎のハザード比[95%CI]: 1 [参照]、 1.21 [0.96-1.52]、1.09 [0.85-1.41] [P = .90 ])
対照的に、非空腹時トリグリセリド値は、完全に補正したモデルでも心血管イベントの、やはり強力な独立した予後因子であった (三分位増加毎のハザード比[95%CI]: 1 [参照]、 1.44 [0.90-2.29]、 1.98 [1.21-3.25] )[P = .006 ]).
参加者の直近食事時間による二次解析にて、2-4時間後測定がもっとも心血管イベントと相関があった(最高三分位vs最低三分位完全補正ハザード比 [95% CI] 4.48 [1.98-10.15] [P<.001])で、空腹時の期間が長いほどこの相関は減少する。
by internalmedicine | 2007-07-18 09:39 | 動脈硬化/循環器