末梢動脈疾患の抗凝固・抗血小板治療の併用はさけるべき
2007年 07月 19日
心血管合併症予防に抗凝固・抗血小板剤の2種類併用が単剤より有効とは限らないということで、Warfarin Antiplatelet Vascular Evaluation (WAVE) trialの報告
併用により、生命に関わる出血が3倍以上増える可能性がある
"Atherothrombosis-Wave Goodbye to Combined Anticoagulation and Antiplatelet Therapy?"
NEJM 2007; 357:293-296.
カナダ、ポーランド、ハンガリー、ウクライナ、中国、オランダ、オーストラリアの80のセンターにおいて、2161名のPAD患者(35-85歳)で、抗血小板・抗凝固剤併用と抗血小板剤単独との比較
抗凝固剤:Warfarin、acenocourmarol (ポーランド、ハンガリーのみ)
抗血小板剤:aspirin、 ticlopidine (Ticlid) 、 clopidogrel (Plavix)
フォローアップ平均35ヶ月
心筋梗塞、卒中、心血管による死亡
併用群:132/1080(12.2%)
抗血小板単剤群:144/1081(13.3%)
(relative risk, 0.92; 95% confidence interval, 0.73 to 1.16; P=0.48
インターベンションを必要とする末梢・冠動脈の重症虚血対象だと
併用群:172(15.9%)
単剤群:188(17.4%)
(relative risk, 0.91; 95% CI, 0.74 to 1.12; P=0.37)
出血性卒中を含めた生命に関わる出血
併用群:43(4.05)
単剤群:13(1.2%)
(relative risk, 3.41; 95% CI, 1.84 to 6.35; P<0.001)
中等度出血も併用群で多い (2.9% versus 1.0%, relative risk 2.82, P=0.002).
併用療法によるPAD患者での出血リスクはCADトライアルより重症出血率が多い
末梢性動脈疾患(PAD)マネージメントUSガイドラインで触れた。
ガイドライン( pdf )では・・・
Class I
1.抗血小板治療は、下肢動脈硬化性PAD患者に対して、MI、卒中、血管死リスクの減少に適応がある(Level of Evidence: A)
2.アスピリン、連日75-325 mg/日が、下肢動脈硬化性PAD患者に対して、MI、卒中、血管死リスクの減少に安全性と有効性の上で推奨される(Level of Evidence: A)
3. Clopidogrel (75 mg /日) は、代換的に下肢動脈硬化性PAD患者に対して、MI、卒中、血管死リスクの減少に推奨 (Level of Evidence: B)
Class III
ワーファリンによる経口抗凝固剤は、動脈硬化性下肢PADを有する患者への虚血性イベントリスク減少に対して、適応がない (Level of Evidence: C)
Antithrombotic Trialists’ Collaboration (ATC) では、抗血小板治療に関しては、75-150mg /日にて32%、160-325 mg/日にて26%、500-1500 mg/日nite
19%と比例減少を示す
アスピリン 75mg/日未満ではCVイベント13%減少
CAPRIE trial (Clopidogrel Versus Aspirin in Patients at Risk of Ischemic Events)では、 PAD患者において、clopidogrelは、MI、卒中、血管死を、アスピリンに比べて、23.8% 減少
アスピリン+clopidogrelの併用効果に関してはエビデンスがない
主に冠動脈疾患研究から考えれば、抗凝固剤の有効性に関しては心血管イベント減少に影響も考慮すべきで、クマリン誘導体による中等度・高度治療はMIや死亡リスクを減少するだろうが、出血リスクも増加する。
ちなみに、プレタール(Cilostazol)に関しては・・・
1. cilostazol (経口100 mg 2 回 / 日)は、症状の改善 、歩行距離に関して有効(心不全のない場合)(Level ofEvidence: A)・・・こうなると、心不全無しの間欠性跛行患者の治療法はプレタールが原則となる気がするのだが・・・
2. 生活に制限をきたす間欠性跛行例ではcilostazolの治療の試みを行わなければならい(心不全のない場合)(Level ofEvidence: A)
cilostazolは、12-24週治療後、最大40%-60%歩行距離を改善する
cilostazolによる心血管イベントの増加を示すトライアルはないが、phosphodiesterase type 3 inhibitorとして心不全患者では使用すべきではない。
by internalmedicine | 2007-07-19 09:56 | 動脈硬化/循環器