慢性肝疾患の6分間歩行距離試験

サウジアラビア(King Saud University)の報告

Six Minute Walk Test to assess functional capacity in chronic liver disease patients
World J Gastroenterol 2007 August;13(29):3996-4001
【目的】 慢性肝疾患患者への6分間歩行試験(6MWT)の有効性

【方法】 18-80歳(平均47歳)、255名を対照に6MWTと6MWD(距離)を測定

【結果】
カテゴリー別
Group A (n = 45) :健康(対照)
group B (n = 49) :慢性B型肝炎 
group C (n = 54) :慢性C型肝炎 
group D (n = 98) :肝硬変


4群間に6MWDsにて差異をみとめた(P < .001)
group A : 421+/- 47 m
group B : 390 +/- 53 m
group C : 357 +/- 72 m
group D : 306 +/- 111 m


6MWDは年齢 (r = -0.482, P < 0.01)、ヘモグロビン (r = 0.373, P < 0.001)、アルブミン(r = 0.311, P < 0.001) と相関

Child-Pugh 分類は、肝硬変患者において6MWDと逆相関 (r = -0.328, P < 0.01).

12ヶ月フォローアップ気管の最後に、98名の肝硬変中15名が合併症にて死亡

肝硬変のうち、生存者は志望者に比べて6MWDが長い (317 +/- 101 vs 245 +/- 145 m, P = 0.021; 95% CI 11-132)

6MWDは独立した生存予後因子である事も判明 (P = 0.024)


6MWTは慢性肝疾患患者の身体機能評価に有効なツールであり、著者らは肝硬変の予後因子としての役割も果たすと説明





従来、慢性肝炎の管理に関して、運動療法とは相容れないと説明がなされていた。昨今はさすがに極度な運動制限を強いる事は少なくなってきた。

一般的な指導の事例( http://www.med.kyushu-u.ac.jp/intmed3/3hepa/p_lc.pdf )
肝硬変や慢性肝炎では、症状の一つとして倦怠感を感じることがあります。倦怠感を自覚した場合は、比較的安静を保つのが原則です。また、むくみ・腹水・黄疸の症状が現れた場合も、安静を保つようにしましょう。
具体的には、
(1) 睡眠時間を多く(8時間程度)とる。
(2) 食事後は、30分程度安静を保つ。
(3) 過労を避ける。夜勤や肉体労働は原則として禁止です。スポーツも必ず主治医と相談してからにして下さい。
(4) 可能な運動量は、主治医と相談して決める。旅行に出かけるときにも、主治医と相談して下さい。
(5) 倦怠感などの症状がなく、主治医からも安静を指示されない眼りは、日常生活は普通に動いて構いませんし、運動の制限もありません。



特に急性肝炎においては、身体活動性低下を重視される傾向と、50年以上前から続く運動の肝臓への悪影響否定的な報告もある。NASHだけでなく肝疾患全般に、内臓脂肪増加、インスリン感受性増加とともにHPA系系活性化し、CRH、コーチゾル、カテコラミン増加とともに、易疲労感との関係が考えられ、より積極的に好気的運動を取り扱ってはどうかという 仮説 につながっている。

こういうのって理学療法の新しい分野だと思うのだが・・・・・

by internalmedicine | 2007-08-03 14:18 | 消化器  

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