神経衰弱という病気

元記事・・・
2場所の出場停止処分を受け、謹慎している大相撲の横綱朝青龍は5日、都内の自宅で精神科医の診察を受け、「神経衰弱状態」などと診断された。Yomiuri Online( H19.8.5 )


神経衰弱という病名・・・なんか時代物の映画とか、トランプゲームの話であり、リアルな医療の現場でついぞきいたことがないのだが・・・どんな病気だろう・・・

1869年に米国のバードという医師が「神経衰弱」neurastheniaという病気を発表した。この病気もCFSと同じような症状を有し、長い間、医学の世界ではポピュラーな病気として存在していた。現在でも世界保健機関(WHO)の定めた国際疾病分類(ICD-10)には、この病気の記載があるが、実際に臨床の現場で「神経衰弱」という病名を用いる医師はほとんどいなくなった。(医療教育情報センター http://www.c-mei.jp/BackNum/068n.htm)



・ Neurasthenia(神経衰弱)は George Miller Beard が 1869年に初めて引用。
・ Beardの定義は、“a condition with symptoms of fatigue, anxiety, headache, impotence, neuralgia and depression”(疲労、不安、頭痛、インポテンツ、神経痛、うつを伴う症状)
・ アメリカでは特に受け入れられ、William Jamesにより一般化され、“Americanitis”というニックネームになった
・ Beardによると、中枢神経エネルギーの消耗によるという説明であり、ビジネス世界では競争が盛んで、都市化や知的階層におけるプレッシャーにより神経衰弱が生じると考えられていた。
・ 電気治療(Electrotherapy)をBeardのパートナーであるA.D. Rockwellが推奨したが、その意味づけには議論が多かった。
・ 1800年代後半に、popularな診断となり、“倦怠、めまい、失神”などの症状を含めるようになり、特に女性では安静治療が勧められた。
・ Sigmoud Freudは1895年この電気治療は偽治療と述べており、プラセボ効果(“push her own pains into the background”)と考えていた。WWIにおいてはこの診断が多かったが、後10年でこの使用は減少していった。
・ 現代の観点から言えば、広範なケースを一括していたものであり、たとえば、Richard M. Fogorosによると、特定の精神状態を表す意味もあったのだろうと考えられている。たとえば、周辺疾患として、線維性筋痛症、慢性疲労症候群、自立神経障害など。そして、一度、“神経衰弱”という診断を受けてしまうと、リアルに身体疾患反応を生じてしまう・・・という副反応を指摘している。
(http://www.answers.com/topic/neurasthenia?cat=health)


電気治療というskepticsとともに広がった疾患であり、注意すべきは、安易に“神経衰弱”という病名をつけてはいけませんよ・・・なぜなら身体反応が出現する危険性がある・・・という話


診断基準:Diagnostic criteria for neurasthenia:

Persistent and distressing symptoms of exhaustion after minor mental or physical effort including general feeling of malaise, combined with a mixed state of excitement and depression.

Accompanied by one or more of these symptoms: muscular aches and pains, dizziness, tension headache, sleep disturbance, inability to relax and irritability.

Inability to recover through rest, relaxation or enjoyment.

Disturbed and restless, unrefreshing sleep, often troubled with dreams.

Duration of over three months.

Does not occur in the presence of organic mental disorders, affective disorder, panic or generalized anxiety disorder.

(http://www.psychnet-uk.com/dsm_iv/neurasthenia.htm )
・・・この診断基準では症状継続が3ヶ月以上のとき診断することとなっており、今回の事例は不適


この診断名を持ち出す意義というのはあるのだろうか?
そして、身体症状を引き出す危険性すらある病名
何より、1回の診察で、診断・治療判断を下せるほど、簡単な病態なのだろうか?

夏目漱石のイギリス留学は1893年で、ちょうど神経衰弱の最盛期だったと想像できる。

by internalmedicine | 2007-08-06 11:21 | 医療一般  

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