群発治療予防にベラパミル処方する場合は心電図をお忘れずに・・・・

と、書いたが、日本ではその前に大きな問題がある。
日本ではベラパミル(ワソラン)使用する場合に一つの障壁がある。
それは、医療保険の効能において、ワソランは“狭心症、心筋梗塞(急性期を除く)、その他の虚血性心疾患”のみで、かつ処方として“通常成人、1回1~2錠(ベラパミル塩酸塩として1回40~80mg)を、1日3回経口投与”と書かれている。

群発頭痛患者のために、ベラパミル処方しようにも、適用外処方の上、副作用がある薬剤。

同意をとっても、患者やその家族、マスコミが、“未承認薬剤使用して副作用”と騒ぎたて、副作用事象にかかわる損害賠償などという大きなリスクを医師・医療機関が負うこととなるのである。・・・結果的にだれが損しているのだろうか?


医師の自由裁量権を奪うことばかり、マスコミ、政府、一部患者団体考えているようだが、こういう事例が現実の問題として存在しているのである。

諸外国では普通に行わている群発頭痛予防治療が日本の医療において存在しえない、存在をゆるしてもらえない事実を一般にもう少し啓発してみてはどうか?

“たかじんの番組”で医師会代表が現状の保険診療は確立したエビデンスに基づいて行われているといったそうだが、そんなことはなく、“確立した医療でさえ”許されていないのである。保険診療における医師の自由裁量権を奪うことは結果的に国民を不幸にしている事実がある。


群発頭痛(Cluster headache)の治療・・・トリプタン系、酸素投与、リドカイン・コカイン、エルゴタミン製剤、鎮痛剤があり、“群発期における毎日の頭痛発作の予防には、ベラパミル,プレドニン,エルゴタミン,リチウム,メチセルジド(本邦未発売)などが使用され”、“慢性群発頭痛の予防”としてはカルシウム拮抗剤、炭酸リチウムなど(日本神経学会治療ガイドライン)

慢性群発頭痛の予防としては、ベラパミルがde facto standardであろう。
上述ガイドラインでは、“慢性型群発頭痛の予防にはカルシウム拮抗薬,とくにベラパミルが有効である.海外では40mgから720mgまでの広い範囲の用量での使用が報告されているが,心伝導遅延作用が著明なため徐脈や心不全の合併が問題となる”と書かれている


群発頭痛(CH)に対して高用量のverapamil使用する例が増えている。
副作用は、房室ブロック、徐脈が含まれる。だが、その頻度は不明とのこと

Electrocardiographic abnormalities in patients with cluster headache on verapamil therapy
NEUROLOGY 2007;69:668-675
369名の外来群発頭痛患者のうち、217名(175名の男性)でベラパミル使用
240mg/日で開始し、2週間毎心電図をチェックしながら、80mgずつ増加し、最大1日960mgまで増加させる。
1200mg/日まで増加例1例
当事者病院で108名心電図記録、20例はほかの病院で記録

不整脈:12/108
1度房室ブロック:13/108(240mg→960mg/日増量時):1例はペースメーカー必要
接合部リズム:4/108
右脚ブロック:4/108

徐脈(HR<60 bpm):39/108、だが、そのための使用中止は4例のみ

PR延長は8例だが、0.2sを超えたものなし

不整脈頻度は19%で、徐脈36%というのが結論




この群発頭痛診療で大変悩まされた経験がある。群発頭痛はとても劇的な症状を訴え、一般医家にとどまることはないのかもしれない。当方の事例も、結果的には神経内科専門医の方へ誘導した。片頭痛に比べ非常に頻度の少ない群発頭痛、有病率は約0.07-0.09%だが、全国に1万人近くはいる疾患である。厚労省など政府はこういう患者の存在に対し無視しつづけるのだろうか?

by internalmedicine | 2007-08-16 09:07 | 内科全般  

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