変形性膝関節症に対する鍼治療ランダム化トライアル・・・その効果の少なさ!



今回のランダム化研究で判明したこと
・ 鍼治療は従来の理学療法士による助言・運動に加え行っても大きな疼痛スコア減少効果は望めない
・ 鍼治療によるベネフィットは疼痛強度減少に限定され、その効果は短期間しか有効でなく、針そのものの効果が寄与しておらず、疼痛関連不快感への効果は臨床的に明らかでない。


そもそも、従来から、鍼治療は、“acupuncture was shown to reduce pain in patients with osteoarthritis of the knee, as compared with no acupuncture and sham acupuncture, but the effect was small. ”とガイドラインに書かれており、赤字に悩むといわれている日本の保険診療ではまだ鍼治療が残存している。柔道整復の問題とともに、このような効率の悪い治療をいまのまま公的保険に残存させていくべきかどうか議論がないのが不思議である。


Acupuncture as an adjunct to exercise based physiotherapy for osteoarthritis of the knee: randomised controlled trial
BMJ, doi:10.1136/bmj.39280.509803.BE (published 15 August 2007)

50歳以上352名の変形性膝関節症
介入
・ 助言・運動:n=116
・ 助言・運動+鍼(ハリ):n=117
・ 助言・運動+非穿通性鍼:n=119


プライマリアウトカム:Western Ontario and McMaster Universities osteoarthritis index pain subscale (6ヶ月後)
セカンダリアウトカム:機能、疼痛強度、疼痛による不快感(2週後、6週後、6ヶ月後、12ヶ月後)

【結果】
6ヶ月後フォローアップ率94%、疼痛スコア基礎値は9.2(3.8)

6ヶ月後疼痛スコア軽減
・ 助言・運動:2.28(3.8)
・ 助言・運動+鍼:2.32(3.6)
・ 助言・運動+偽鍼:2.53(4.2)


助言・運動単独と鍼追加での平均変化スコアは・・・
本物の鍼治療:0.08(95%CI -1.0-0.9)
プラセボの鍼治療:-.25(95%CI -.0.8-1.3)


他のフォローアップポイントでも同様の有意差なしの傾向であった。

助言・運動と比較して、鍼治療・偽鍼治療とも疼痛強度・疼痛に不快に対して統計学的に有意な差をみとめない





変形性膝関節症の正規の医療外マーケットというのはどの程度の規模なのだろう。テレビをつければサプリメントの宣伝、街中を歩けば鍼灸の看板・・・他、不適切な柔道整復の診療報酬問題なども・・・



変形性膝関節症関係のガイドライン
American College of Rheumatology Subcommittee on Osteoarthritis Guidelines. Recommendations for the medical management of osteoarthritis of the hip and knee: 2000 update. Arthritis Rheum 2000;43:1905-1915.

Eccles M, Freemantle N, Mason J. North of England evidence based guideline development project: summary guideline for non-steroidal anti-inflammatory drugs versus basic analgesia in treating the pain of degenerative arthritis. BMJ 1998;317:526-530.

Pendleton A, Arden N, Dougados M, et al. EULAR recommendations for the management of knee osteoarthritis: report of a task force of the Standing Committee for International Clinical Studies Including Therapeutic Trials (ESCISIT). Ann Rheum Dis 2000;59:936-944.



NEJMの"clinical practice"を参考にすると、治療は、
Nonsteroidal Antiinflammatory Drugs, Cyclooxygenase-2 Inhibitors, and
Acetaminophen
Injections of Hyaluronic Acid
Glucosamine and Chondroitin Sulfate
Other Pharmacologic Therapies

Nonpharmacologic Treatment

運動:
resistance training(抵抗性運動)
好気的運動

Unloading(負荷軽減)
Cane or crutch
減量

Realignment
braces and patellar taping
shoe insert

Acupuncture
と書かれていて、鍼治療の効果への疑問は上述のごとくである。

サプリメントに関しても、その有効性に疑問符という方向の報告が多い・・・というのは本ブログで既出
グルコサミン・コンドロイチン硫酸の関節症に関する効果は中等症・重症に限定的効果(しかも、併用時のみ)
コンドロイシン硫酸、グルコサミンの変形性膝関節症への効果

by internalmedicine | 2007-08-17 08:26 | 運動系  

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