ヨーロッパでの熱波によるいわゆる日射病(熱中症)症例

熱射病(Heat stroke)は重症の熱関連疾患であり、核体温40度を超え、中枢神経障害を伴うものと定義されている。サウジアラビアやUSの熱帯での経験は多くの臨床経験が報告されているが、ヨーロッパでは激しい運動による運動性のheatstroke(Exertion induced Heat Stroke:EIHS)に比べ、高温という外的条件だけによるheatstrokeは非常に稀であった。 年齢、低社会経済状態、慢性疾患、体温調整機能を障害する薬剤などの報告など関連因子の報告がされている。
今までのheatstrokeの臨床的記載では多臓器障害の発生と生存者の後遺症が報告されている。

NHK・各民放で、この運動性のEIHSを、いわゆる日射病の熱射病(古典的・非運動性)と混同したニュースが流れ、熱中症担当として厚労省でなく、環境省の役人が専門家として、コメントを述べるという・・・とてもみていても混乱する状況の日本をみると情けなくなる。

報告は、ヨーロッパは2003年8月1-20日の間、例外的な熱波があり、1873年の記録開始以来の極端な気温であった。120万人の地中海エリアのリオンでの分析。

Short- and Long-term Outcomes of Heatstroke Following the 2003 Heat Wave in Lyon, France
Arch Intern Med. 2007;167(Free full text)

83名の熱波で、28日死亡率、2年死亡率はそれぞれ58%、71%



死亡率は熱の程度と臓器障害の数に依存

多変量解析で、死亡率と独立して関連することが判明したもの
・ 施設から(HR 1.98 95%CI 1.05-3.71)
・ 長期降圧剤使用(HR 2.17 95%CI 1.17-4.05)
・ 入院中の無尿の存在(HR, 5.24; 95% CI, 2.29-12.03)
・ 昏睡(HR, 2.95; 95% CI, 1.26-6.91)
・ 心血管機能不全 (HR, 2.43; 95% CI, 1.14-5.17)


多変量解析でみると生存者は1、2年後劇的な昨日状態の改善を示している




様々な情報が含まれているが、"全患者のうち、80(95%)が薬剤を何らか使用しており、63名が利尿剤を主とする降圧剤かトランキライザーを主とする向精神薬であった"という文言が気になった。

体の熱は環境からと、代謝により得るわけだが、この総熱負荷は37度に維持するように影響を消しさる温度調整機能を体は有する。
1度未満の体温増加で、末梢、下垂体温度受容器受容体を活性化し、視床下部体温調整中枢にシグナルを送り、このセンターからの遠心反応は暖められた血液を体表面へ送ることで調整がなされる。
ref. NEUROPHYSIOLOGY OF THERMOREGULATION

活動性の交感神経の皮膚の血管拡張は毎分8Lも皮膚血流を増加することとなる。体温増加は体温性発汗も生じる。体表面周囲の空気は水分飽和されてないなら、汗が気化し、体表面を冷やすこととなる。汗1.7mlの気化に対して熱エネルギー1kcalの消費することとなる。
感想環境での最大条件下で、発汗により約600kcal/時間消費することとなる。
汗の蒸発による熱勾配は体から環境への熱受け渡しのうえでcriticalなものである。
体温増加により頻拍、心拍出量、分時換気量増加する。

血液は中枢循環から筋肉、皮膚へ、熱放散を促進し、内臓還流を減少させ、特に腸管、腎臓の循環減少が著しい

汗による水の喪失は、1時間あたり2リッターにも及ぶ事もあり、塩分も喪失をともない、豊富な塩分供給が体温調整を促進することとなる。脱水、塩分喪失は体温調整を阻害する
N Engl J Med Volume 346:1978-1988 June 20, 2002 Number 25>

やはり、降圧利尿剤投与中の患者は注意が必要だろう・・・

熱射病に熱波開始後4日めに死亡数増加が目立ち、減少は気温減少とともに速やかに少なくなるようである。

by internalmedicine | 2007-08-22 08:55 | 医療一般  

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