たこつぼ心筋症(LVAB syndrome)で終わらすな・・・

症例呈示
43再女性、1時間の胸部圧迫、動悸、軽度頭痛、発汗
4ヶ月前が、最初のエピソードで、以来、運動・情緒的なストレッサーと関連のないエピソードが頻回となり、受診。血圧は 95/60 mmHg、理学所見に著明なもの無し
ECG:洞調律で、全般的に深いT波陰転化、QT延長(480ms)
血中troponin T濃度は軽度増加
アスピリン、ヘパリン、atorvastatinをACSを仮定され投与を受け、CAGでは異常なく、心室造影、2Dエコーで左室中、遠心部のakinesis、基部のhyperkinesisを、いわゆるapical balloningを示した。
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心電図異常は4週間で改善
診断としては、left-ventricular apical balloning(LVAB) syndrome



・・・というところで、一件落着・・・・とすると大間違い

24時間尿中排泄
epinephrine 461 nmoles( (正常上限 60 nmoles)
norepinephrine 1133 nmoles( (正常上限 600 nmoles)
metanephrines 75·7 μmoles(正常上限 5·5 μmoles)


褐色細胞腫の診断され、腫瘤摘出後、ホルモン改善

Lancetの症例報告
Case Report:Not a broken heart
The Lancet 2007; 370:628


一過性のLVAB syndromeは収縮期機能障害、心尖部・中部の運動性減少と基部の運動増加するのが特徴で、急性の心理的・身体的ストレスが原因で主に女性の多く、胸痛と心電図異常を伴い、心不全も生じることがある。
心電図異常は前壁梗塞とV1-3よりV4-6のST上昇が目立つ事、後側誘導のreciprocal changeが無いこと、前胸部・広範な誘導での深いT陰転化、QT間隔の著明延長などで鑑別可能なことがある。
心理的ストレスが生じる値、一過性のLVAB syndrome、日本ではとくに“たこつぼ心筋症”とよばれている。
一過性LVAB sydromeのうちに血中カテコラミン値増加が追跡している間に消失することが報告されている。一過性LVABを生じるカテコラミン過剰と微小血管収縮・直截な心筋障害が特異的なメカニズムはいずれもまだ不明。心先負がアドレナリン作動性刺激に特に感受性が高いことは知られている。今回の事例に関して、たこつぼ心筋症と鑑別困難な事例で、カテコラミンがこの病態に関係しているのではないかという傍証にはなるだろう。




この病態、遡ること、数年前たこつぼ心筋症のケースに遭遇したのに、論文と直結してなかったという恥ずかしい経験をした・・・・傷心症候群? 新しい疾患概念

ref.)
Mori H, Ishikawa S, Kojima S, et al. Increased responsiveness of left ventricular apical myocardium to adrenergic stimuli. Cardiovasc Res 1993; 27: 192-198.


たこつぼ心筋症の発見:http://www.jhf.or.jp/shinzo/mth/images/History-38-8.pdf

by internalmedicine | 2007-08-24 11:03 | 動脈硬化/循環器  

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