心理的ストレスとヒトの免疫システム:メタアナリシス
2004年 07月 07日
A Meta-Analytic Study of 30 Years of Inquiry
Psychological Bulletin2004, Vol. 130, No. 4, 601–630
・心理学的ストレスと免疫システムのパラメーターとの関係に関する300以上の経験的文献がメタアナリシスしたもの。
・数分程度の急性ストレッサーは適応的な、“natural immunity”のいくつかのパラメーターのupregulationと関係と特異的免疫のいくつかのdownregulationと相関。
・試験などの短期的"naturalistic stressor”は液性免疫は温存するが、細胞性免疫を低下させる。
・慢性ストレッサーは、細胞性・液性免疫ともに抑制。イベントの種類(外傷とかlossなど)に応じて様々。ストレスの主観的報告は一般的には免疫学的変化と相関しない。
例:健康対象者の慢性ストレスの免疫反応を有意差のあるのは、ワクチン接種後のインフルエンザ抗体量、Natural killer cell cytotoxicity(P=0.04)、リンパ球増殖(ConAによる(P=0.02)、PHAによる(P=0.004))、IL-2産生(P=0.001)
・年齢や疾患などの身体的感受性もストレッサーの間の免疫変化の感受性増加するものがある。
例:HIV/AIDS患者での期間不明の大きなあるいは小さなイベントによる免疫応答:NK細胞カウント(P=0.001)
例:喘息患者における短期的自然なストレス
好中球機能(FMLP・PHAによるsuperoxide遊離(P=0.004、p=0.001))、NK細胞機能(NK細胞cytotoxicity P=0.001)、リンパ球サブセットカウント(NK細胞 P=0.05)、特異的免疫(EBウィルス P=.003)
・ストレスフルな経験による人々の心血管や神経内分泌反応は、状況や侵入性想起症状(intrusive thought; IT → 参考)の評価によるものと考えられる研究がある (Baum et al., 1993; Frankenhauser, 1975; Tomaka et al., 1997)。
同様のロジックが免疫応答にも適応されるはずと考えられるのだが、主観的測定を含む研究では少数しかみとめられず、均一でないストレッサーなどの方法論の問題でこの報告数が少ない。結果として、健康対象者における免疫応答では、“intrusive thought”とNK細胞活性の関係を除いて有意な差をみい出せなかった。
なお、funnel plotで明確な出版バイアスは認められなかったとの記載があります。
上記、メタアナリシスをみてどう解釈するか問題ですが、あんまり確定的なことはいえそうもないですね。短期的なストレッサーがより明確な影響がありそう、ただ、長期持続的なストレスは持続的間欠的ストレスが免疫応答に異常をきたすのか?やや根拠不足って印象です。
でもこの種のメタアナリシスは今後・・多く引用されそうなな予感がします。
さて、これで癌などのパニック的恐怖と免疫能、PTSDと免疫系の解釈にすこしはやくだつのか・・・
by internalmedicine | 2004-07-07 18:05 | 医学