臍周囲計測:平成の赤紙対象者基準
2007年 08月 29日
NHKスペシャル「赤紙が来た村 ~誰がなぜ戦場へ送られたのか~」の再放送を最近みたが、戦前のごり押し行政は未だ健在のようである。
“保健指導対象者の選定は、内臓脂肪蓄積の程度とリスク要因の数に着目”され選定されるとのこと(保健指導対象者の選定と階層化)
現代の赤紙対象者の選定基準が設定されているのである。
さて、おかみが、あまりに先走っているので、例のパワーリハや介護保険と同様、詰めの甘いところがいっぱいであり、そもそも、内臓脂肪量のゴールデンスタンダードは、ある医療機関のみのCTにおける脂肪量と腹囲測定(その時に標準化された計測がされていたかは不明)であり、これを日本人全体のエビデンスとして良いかが疑問である。そして、実施予定されている腹囲測定の標準化に疑問がある。一方で、(標準的な健診・保健指導プログラム(確定版))なるものの設定にて、行政は、未だ仮説のひとつに過ぎない“メタボリックシンドローム”を“内臓脂肪型肥満を共通の要因として、高血糖、脂質異常、高血圧を呈する病態であり、それぞれが重複した場合は、虚血性心疾患、脳血管疾患等の発症リスクが高く、内臓脂肪を減少させることでそれらの発症リスクの低減が図られるという考え方を基本”として、この対策をごり押ししている。
何度も言うが、“US and European Diabetes Organizations Question Existence of Metabolic Syndrome”とアメリカ糖尿病学会・ヨーロッパ糖尿病学会合同会合というべき
(ADA・EASD)もこの疾患の存在に疑問を呈している(Medscape 2005)のである。
こんなものを国策としている日本・・・一部軍人の暴走をきっかけに政治の無力、そして、世界の情勢を理解せず、太平洋戦争に突入と類似している情勢・・・良いのかこんないい加減な行政で・・・
さて、“赤紙”の基準の一つ、でっぷりおなかの測定法はというと・・・
“メタボリックシンドロームの診断と臍周囲計測のポイント
Diabetes Journal Vol.35, No.2, 2007(pdf)”ってのに、測定法が書かれており、相違がみられる。
・臍位で水平にメジャーを回す
・過剰な脂肪蓄積で腹部が膨降下垂し、臍が正常位にない症例では肋骨弓下縁と前腸骨稜上縁との中点で水平に測定。
・上半身の服を脱ぎ、両足をそろえた立位で、緊張せずに腕を両側に下げる。
・腹壁の緊張をとる。
・軽く呼吸して、呼気終期に測定。
・非伸縮性のの布製メジャーを使用する。
・0.1cm単位で計測する。
・腹囲の前後が水平になるように計測する。
・メジャーが腹囲に食い込まないように注意する。
・食事による測定誤差を避けるため、空腹時に計測する。
前述のブログ記載した
<厚労省ウェブ記載の腹囲測定方法>
メタボリックシンドロームの診断基準に基づき、立位、軽呼気時、臍レベルで測定する。
脂肪蓄積が著明で臍が下方に偏位している場合は肋骨下縁と前上腸骨棘の中点の高さで測定する。
標準化に関する記載
http://www.metabolic-syndrome-institute.org/medical_information/screening_diagnosis
腹への張力をコントロールするために弾性を有するテープ(e.g. Gulick model)が好ましい。
非伸縮性テープを用いる場合は、目盛りのついてない3-5cmほどの端っこをつかんで測定すること。
肩幅に足を開きたたせる。腕は体の両側に垂らすが、測定時に楽なように30度開く。
もしこれで安静が保てない場合は、楽な姿勢を保ちながら、腕を交差させる。
テープに軽度張力をかけて、測定を行う。
通常の呼気終末で測定。被験者が腹部筋肉を収縮しないように励ます。
検査側は、もし腹筋収縮の疑いがあるなら会話を行うなどしてみる。
測定は2回行い、もしその違いが5%(±1cm)以上なら3回目を測定する。もっとも近い2つの測定値を平均化する。
1. 左右の最下端肋骨に記しをつける
2. 左右腸骨稜にマーク
3. この2つのマークの中間を鉛筆でマーク
4. 中間点を結び水平にテープを置く(鏡を使うと役立つ)
5. 測定時軽度張度をテープにかける。
メジャーの材質、呼吸のタイミング、測定誤差などに違いがあり、標準化といえない状態である
こんな標準化されているとはいえない基準を赤紙の基準としてよいのだろうか?
ワンパターンのMS診断根拠JAMA論文
The Metabolic Syndrome and Total and Cardiovascular Disease Mortality in Middle-aged Men
JAMA. 2002;288:2709-2716.
この論文の、
“糖・インスリン代謝の異常、過体重、腹部脂肪分布、軽度脂質異常、高血圧の同時発生による症候群”であるmetabolic syndromeはその後の2型糖尿病、CVD発症に関連して重要である。そして、この症候群はインスリン抵抗性によって特徴付けられている。肥満や運動不足のライフスタイル、食事といったものは遺伝的要因とともにこの症候群を作り出す元になるのだろう。という記載が根本であるはず。
腹部脂肪分布だけをメタボリックシンドロームとしているのはおかしいのである。
by internalmedicine | 2007-08-29 09:07 | 動脈硬化/循環器