高血圧患者の左室肥大診断に、現行の心電図クライテリアは役立たない

以下ごちゃごちゃ書いているが、要するに、臨床実地上、高血圧性の左室肥大に対して心電図は役立たないので、心電図クライテリアは高血圧左室肥大診断除外のために使用すべきではないという驚くべき結論


左室肥大を有する高血圧患者は5~10倍CVリスクを増やすということ、12誘導心電図においていくつかのクライテリアが発表されているが、今回のシステミックレビューによりプライマリケア・二次医療機関で行う場合に左室肥大除外する正確性に疑問が生じた。高血圧患者に対する心電図はやはり包括的な評価のためには必要ではあるが・・・とBMJ誌に書かれている。



Accuracy of electrocardiography in diagnosis of left ventricular hypertrophy in arterial hypertension: systematic review
BMJ, doi:10.1136/bmj.39276.636354.AE (published 28 August 2007)
5608患者の21研究の分析
左室肥大の頻度は、プライマリケア(21研究)で33%(23-41%)、二次医療機関(11研究)で65% (37-81%)
陰性尤度比中央値は心電図研究を通して類似しており、Romhilt-Estes scoreの0.85(0.34-1.03) から Gubner indexの0.91(0.70-1.01)などである。

左室肥大診断の6つの心電図指数定義
・ Sokolow-Lyon index : sum of SV1+RV5 or V6>3.5 mV

・ Cornell voltage index : 男: RaVL+SV3>2.8 mV; 女: RaVL+SV3>2.0 mV

・ Cornell product : 男: (SV3+RaVL)xQRS duration≧2440 ms; 女: (SV3+(RaVL+8 mV))xQRS duration>2440 ms

・ Gubner : RI+SIII≧25 mV

・ Romhilt-Estes scores : 4点、5点という2つの閾値使用
・excessive amplitude: 3 点 (largest R or S wave in limb leads≧ 20 mV or S wave in V1 or V2 ≧30 mV or R wave in V5 or V6 ≧30 mV)
・ST-T segment pattern of LV strain: 3 点 (ST-T segment vector shifted in direction opposite to mean QRS vector)
・Left atrial involvement: 3 点 (terminal negativity of P wave in V1≧1 mm with duration ≧0.04 s)
・Left axis deviation: 2 点 (left axis ≧–30° in frontal plain). Prolonged QRS duration: 1 point (≧0.09 s)
・Intrinsicoid deflection: 1 点 (intrinsicoid deflection in V5 or V6≧0.05 s)
心筋が胸壁から離れるときに単極誘導などではピークから急にdownstrokeを生じる現象で、R波直上から下方に振れること。R wave peak timeはQRS coplex開始からR波のピークまでのことで、“the time of the intrinsicoid deflection”であり、左室肥大のためこの時間が遅れる。 (http://cancerweb.ncl.ac.uk/cgi-bin/omd?intrinsicoid+deflection

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Romhilt-Estesスコアをプライマリケアで使用した時の心電図陰性所見では検査前確率を33%から31%を減らすこととなる。
二次医療では65%の可能性を63%に減らす

by internalmedicine | 2007-08-30 08:50 | 動脈硬化/循環器  

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