医師のコミュニケーションスキルは、患者からの苦情・医療ミスクレームの推定因子となりえる

患者・医師コミュニケーションがうまくいかないと患者の苦情・医療ミスののクレームが多くなる。行政監督で調査された苦情は、国家試験時のコミュニケーション・スコアがひとつの推定因子となりえることが判明した。

医師としての技量としてコミュニケーションスキルが重要であることが改めて判明した。

Physician Scores on a National Clinical Skills Examination as Predictors of Complaints to Medical Regulatory Authorities
JAMA. 2007;298:993-1001.
カナダの臨床的スキル試験を受けた上にオンタリオ、ケベックで資格をとった3424名の医師の2005年までのコホートで、臨床経験2-12年までの比較

行政監督機関のフィールドによる患者の訴え調査ファイル

3424名の医師に対して1116の苦情ファイル、696の苦情が調査後も問題ありと認識された。

医師のうち、17.1%が(当局により認知された)苦情を有し、そのうち81.9%がコミュニケーションと医療の質の問題

患者・医師コミュニケーションスコアは31-723(平均 510.9[91.1])

コミュニケーションスコアの2SD未満のものは
・苦情:+1.17/100人年 : 相対リスク 1.38 (95%CI 1.18-1.61)
・コミュニケーション苦情:+1.20/100人年 : 相対リスク 1.20 (95%CI 1.15-1.77)


従来の筆記試験に臨床医師決定スコアの推定能力補正したところ、患者・医師コミュニケーションスコアの苦情の予測因子は有意差維持のまま(尤度比テスト P<.001)であり、最下位4分位のスコアのものは、苦情9.2%(95%CI 4.7-13.1%)の追加的説明となりうる。




”Diificult Patient"の問題とともに、患者・医師の相互関係について改めて考えさせられる報告である。今後の医師免許試験時あるいは生涯教育の場でコミュニケーション・スキルは必須な要件となってくるだろう。
だが、医師サイドばかりに責任を負わさる結果、医師たちが、訴訟リスクや苦情リスクの頻度の高い診療科を避ける傾向となり、真面目に診療するほど“疲労・ストレス・燃え尽き”を生じたことも十分考慮されるべきである。“Difficult Patient”はやはり患者サイドの要因が主因である。また施設要因を日本では軽視されるところが大きい。経営幹部と医師のコミュニケーションがうまくいっていないために多くの不具合が生じているところも多いのだ。

by internalmedicine | 2007-09-05 14:46 | 医療一般  

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