科学的といえないメタボリックシンドロームに固執する御用学者たち

はらだたしい報道が昨日からあったので・・・新しい論文の紹介というわけではないが、書き込んでおく。テレビなどのマスコミもこの問題を取り上げれば、役人のごり押しや政治のやり方ってことでずいぶん勉強になるのではないかと思うが、残念ながら、この面は記者クラブ経由の広報に成り下がって、メタボ関連商品とやらの広告で潤っている民放や政治家から牛耳られているNHKではそういう放送ができないのだろう。日本には、真の報道の自由というのはないのである。

メタボリックシンドローム対策でリスク数改善と言い張っているデータ( http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/08/dl/s0830-2b.pdf 5ページめあたり)をみれば、いかにこの事業の根拠が薄弱で、国民を小馬鹿にしているかがわかる。厚労省はエビデンスに基づくと言いながら、ちゃんとした対照をとっていない、前後対象比較のみみっちい数のデータのみしかだしていないのである。こんな報告、そこらへんのレフリーのしっかりしてない論文にすら掲載できないたぐいのもの・・・

メタボリックシンドロームに関わる医療系のいわゆる専門家たちに対して、わたしは不信感をもっている。結論先にありきのまるで官僚のような態度を示すのである。国際的に見てもその存在が疑問視されてきているのにかかわらず、ごり押ししつづける、厚労省と御用学者という・・・考えたくないがそううつるのである。
そう思われたくなければ、東海大学の大串先生あたりと、公開討論などすれば良いではないか・・・と思うのだが・・・

この概念は臨床的エビデンスがまだ不確定であり、動脈硬化アウトカムに関わる臨床的推定としてまだ未熟(BMJ 2006;332:878-882 (15 April))であり、メタボリックシンドロームってのが必ずしもその定義をすべての専門家が肯定しているわけではない<MayoClinic.com>。





昨年から当ブログでもこの疾患概念?の暴走に対して疑問を呈してきた。
メタボリックシンドロームの危うさ・怪しさ 2006年 05月 09日
メタボリックシンドロームを考え違いしてないか?2006年 04月 25日
メタボリックシンドロームって・・・そんなにすごいんか?2006年 04月 14日
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定義をごちゃごちゃといじるだけの・・・メタボリックシンドローム 2007年 06月 22日
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肥満てそんなに悪いのか? 2007年 10月 16日



メタボリックシンドロームというのは、“エビデンスがまだ不確定であり、臨床的推定としてはまだ未熟!”なのである。

日本肥満学会が下記ごとく、メタボリックシンドロームの基準見直しの必要性無しと断定したらしいが、彼らの結論は真に科学的といえるかどうか?

松沢氏が関係している著作物
日本肥満学会肥満症診断基準検討委員会 松沢裕次ら 新しい肥満の判断と肥満症の診断基準. 肥満研究, 6, 18-28 (2000)
The Examination Committtee of Criteria for "Obesity Disease" in Japan; Japan Society for the Study of Obesity: New Criteria for 'obesity disease' in Japan. Circ J. 66 11 , 987-992, 2002.
彼とて肥満の研究者かもしれないが、メタボリックシンドロームの専門家といえるのだろうか?

日本人の腹囲基準は周辺であつめたCT事例の集積が根拠であり、決して地域的疫学的研究によるものではないのである。この“知見”により行われるメタボ検診はあまねく国民全般なのである。真にメタボ検診が有益であるかはこの母集団に類似した対象であるべきなのにそれがなされていないのである。

一度発表されたものを撤回しないというのは科学的といえるのかどうか?・・・一度、基本に立ち戻って欲しいものである。


男性に厳しいメタボ基準、変更不要と肥満学会
 男性に厳しく女性に甘いメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の腹囲による国内診断基準が、世界標準と大きく異なる点について、基準策定の中心となった日本肥満学会は19日、「基準を変える必要はない」との見解を公表した。
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 内臓の周りに脂肪がたまるメタボリックシンドロームの診断基準は、腹囲が「男性85センチ以上、女性90センチ以上」の条件を満たした上で、血圧、血糖値、血中脂質の値のうち2項目が基準を上回ること。来年度から40歳以上を対象に始まる特定健診では、メタボリックシンドロームやその予備軍と診断された人は、生活習慣病を予防するための特定保健指導を受けることになる。

 しかし、米国の肥満基準は腹囲が「男性102センチ超、女性88センチ超」で、世界的には男性の方が緩いのが普通。特定健診の導入を半年後に控え、基準の妥当性を疑問視する声が出ていた。

 これに対し同学会の松沢佑次理事長は、「内臓脂肪の量から腹囲基準を決めたのは日本だけ」と改めて診断基準の妥当性を訴えた。

 日本の診断基準は、日本内科学会や日本肥満学会など8学会が検討し、05年4月に公表された。

(2007年10月20日1時11分 読売新聞)



メタボ騒ぎは、パワーリハビリテーションの時の騒ぎに似ている。あれはあまりにも業者と関連した“医学者”と格段に稚拙な研究があり、木っ端みじんとなったと思うが、それでも、介護保険給付の引き下げ根拠の一役となった。厚労省の馬鹿役人どもにへつらう一部学者たちがまるでそれが科学であるかのごとく振る舞い、一般国民を表面的に納得させるそういう技法なのだ・・・民主党あたりががんばってもらってこの辺の灰色の部分を探って欲しいのだが・・・
パワーリハの時はがんばってくれたと思うのでやや期待。


それにしても、高血圧の方がはるかにインパクトが高いと思うのだが、わざわざ存在すらあやしい概念をつくりだして、国家的プロジェクトにするその背後の意味合いというのは何なんだろう?

単なる国民への目くらまし?




H19.10.29加筆
問題提起としてはヒットをときどき飛ばす「週間金曜日」(10.26)を眼にした。
「「特定検診・特定保健指導」はいま、検診率や健康改善率など、実現不可能とも思える目標値を掲げて突き進んでいる。その背景には、「メタボ」で医療、保険分野への参入をねらう企業の意図も見え隠れする」という書き出しから始まり、「もともと科学的だったメタボリックシンドローム」が、「実際には、選出された委員が検討しただけで、どの学会でも真偽だれたものではなかった。また、日本内科学会総会でも「公表」されただけで、認定されたわけではない」診断基準という指摘はなかなか鋭い。
受診率目標設定はよほど特殊な地域でないと不可能であることも記載されている。
まさに、絵に描いた餅 なのである。

こうやって膨大な税金を効用のはっきりしない事業に消えていくのである。

責任をとれよ バカ役人、賛成した政治家ども、御用学者ども


ところで、「週刊 東洋経済」)2007年11月3日特大号(2007年10月29日発売))に激突! メタボ健診の是非 “松澤佑次/住友病院院長、大櫛陽一/東海大学医学部教授”という記事があるようである。中身はどうなのか知らないが・・・この雑誌かなり質が高いので期待できると思う。

by internalmedicine | 2007-10-20 08:40 | 動脈硬化/循環器  

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