乳ガン手術前の催眠術はコスト効果的

催眠術で人工呼吸離脱困難症の治療の試み(Chest, Vol 87, 267-269,)を見たことがあり、後続の論文を期待してたのだが、まだまとまった報告を見たことがなかった。

術前の催眠術という考えも当然あるだろうと思っていたが、やはり報告を見つけた(Anesth Analg 2006;102:1394-1396)。

コスト効果論文なので、日本で直接当てはまるものではない。特に手術時間コスト削減にインセンティブがさほど働かない日本では無視しうるコストなのかもしれない。


乳ガン手術患者に対する簡易催眠法RCT
乳ガン術後は手術後疼痛、吐き気、倦怠感などを生じるが、術中の麻酔剤や鎮痛剤の使用減少し、乳ガン術後の副作用を減少させ、コスト効果的となるかもしれないという仮説に対するトライアル。

A Randomized Clinical Trial of a Brief Hypnosis Intervention to Control Side Effects in Breast Surgery Patients
Montgomery et al. J. Natl. Cancer Inst..2007; 0: djm106v1-1312
切開生検や乳房摘出術を受ける予定の200名の被験者を、15分間の心理専門家による催眠術と非指示的共感的傾聴(attention controlとする)とにランダム割り当て
故に患者にはグループ割り当ては盲目的でない。

催眠術群は対照群に比して、ルーチンとした鎮静剤であるpropofol必要量が少なく (means = 64.01 versus 96.64 µg; difference = 32.63; 95% confidence interval [CI] = 3.95 to 61.30) 、lidocaine 筆両々も少なかった(means = 24.23 versus 31.09 mL; difference = 6.86; 95% CI = 3.05 to 10.68)。

催眠術群では痛み強度が少なくmeans = 22.43 versus 47.83; difference = 25.40; 95% CI = 17.56 to 33.25)、疼痛不快も少なく (means = 21.19 versus 39.05; difference = 17.86; 95% CI = 9.92 to 25.80)、吐き気も少なく (means = 6.57 versus 25.49; difference = 18.92; 95% CI = 12.98 to 24.87)、疲労感も少なく fatigue (means = 29.47 versus 54.20; difference = 24.73; 95% CI = 16.64 to 32.83)、不快も少なく(means = 23.01 versus 43.20; difference = 20.19; 95% CI = 12.36 to 28.02)、情緒不安定も少ない (means = 8.67 versus 33.46; difference = 24.79; 95% CI = 18.56 to 31.03)。

fentanylやmidazolamや回復室での麻酔使用に関しては統計的な有意差がなかった。

乳ガン施設コストは1人あたり$8561

催眠術群では対照群より$772.71ドル少なかった (95% CI = 75.10 to 1469.89)、これは主に手術時間の減少によるコスト削減効果である。

by internalmedicine | 2007-10-23 09:10 | がん  

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