肺炎入院時のレントゲンフォローのタイミング

”肺炎のガイドラインというのは多くのガイダンスは出すが、そんなに多くのエビデンスは持たない(Eur Respir J 2002; 20:1-3)”というのは洋の東西を問わず?

日本呼吸器学会の市中肺炎ガイドラインもしかり

IDSAガイドライン(Clinical Infectious Diseases 2007;44:S27-S72)で胸部レントゲン写真の項目を確認すると、
その微生物学的データの有無にかかわらず、肺炎の診断には臨床的所見に加え胸部レントゲン、他の画像診断にて浸潤が示されることが重要 (Moderate recommendation; level III evidence.)
CAPの診断は臨床的特徴(たとえば、咳、発熱、喀痰、胸膜性の胸痛)と肺の画像診断による確認、通常はレントゲン写真がなされる。理学所見はラ音や期間しおんが重要な評価の構成成分となるが、胸部レントゲンに比べ感度・特異度とも落ちる。
臨床的特徴、身体所見とも老人ではみられなかったり、変容することがある。
患者は全員パルスオキシメトリーでスクリーンすべきであり、肺炎の明らかな所見のない肺炎の存在や肺炎診断患者の低酸素血症の存在を示唆することともなる。
胸部レントゲンは肺炎を疑う患者ではルーチンに評価が必要で、咳・熱の原因として、急性気管支炎のような病態との鑑別の助けになる。病因、予後、代替治療、関連病態の示唆に役立つこともある。稀に入院時胸部レントゲン所見が正常であっても気管支炎より患者がtoxicな状態であることがある。CTはより感度が高いが、レントゲン所見陰性のときにCT所見がある時の臨床的重要さは今のところ不明である。肺炎を疑い入院し、レントゲン異常のない患者では、抗生剤を仮説的に治療することは合理性があり、24-48時間繰り返し画像診断を取る必要がある。
とある。

一度レントゲン上肺炎の診断がなされたなら、臨床医たちは繰りかえしレントゲンを撮るが、その適切なタイミングを判断する有用なデータを持っていない。オランダの研究者たちは、CAP治療研究で参加したルーチンのフォローアップX線の結果を標準化スケールにて定義された重症CAPで入院した227名の患者で検討してみたところ、重症肺炎入院患者での胸部レントゲンのルーチン短期フォローアップは追加的な価値はないようである。

Patterns of resolution of chest radiograph abnormalities in adults hospitalized with severe community-acquired pneumonia.
Clin Infect Dis. 2007 Oct 15;45(8):983-91. Epub 2007 Sep 12.


day7でのルーチンレントゲンでは75%で以上残存するも、臨床的改善56%
day 28で195でレントゲン施行し、約半数でレントゲン陰影残存、臨床的改善78%

より重症の肺炎(複数の葉浸潤とBUN、CRP高値)はレントゲン改善の遅れと関連し、肺炎球菌肺炎診断時に特に著明。

興味有ることに臨床的な失敗は持続的なレントゲン異常の継続の予測因子とはなり得ないということ




これ、長期的なレントゲンフォローとの混乱してほしくない。繰り返しの肺炎は肺癌合併の可能性があるので注意が必要だと思う・・・


当方、本日の薬品会社による薬剤説明会で、抗生剤の治療効果にCRPと白血球数を出している報告を説明していたのを聞いた

CRPはレントゲン浸潤や、細菌による下気道感染を除外するのに感度が十分でなく、抗生剤処方の迅速診断として広く採用される一致し、かつ、十分なエビデンスとはいえないというシステミックレビューがある(

実際には、SAAの結果は迅速に結果が帰ってくる環境にないのでCRPをありがたく使っている。

ちょっと復習すると、
CRPは古い発見で1930年であり、非特異的な急性期蛋白として感度の良いマーカーとして使用されている。最近ではこの急性期蛋白も急性期に増える"positive" acute phase proteinと減少する"negative" acute phase proteinに分けられ、炎症期に25%の増減するものと定義されている。proteinase inhibitorや凝固因子、補体、transport proteinも含まれ、CRPとその感度、反応スピード、dynamic rangeが対抗できるもとのして血中アミロイドA蛋白がある。いずれも肝臓で産生される。((Chest. 2004;125:1192-1195.))
他の論文を見ると、全面的にCRPを否定している訳でもない。まぁしばらくはCRPのやっかいになることが多いのだろうが・・・(妥協ですな)

IDSAガイドライン(Clinical Infectious Diseases 2007;44:S27-S72)では、治療非反応例を“nonresponding pneumonia”として、定義を抗生剤治療にかかわらず不適切な臨床的効果しかないというもので、文献上のクリアカットで明確な定義はない。一般的には7病日にて発熱が持続している状態で、1)より高次の期間への搬送、2)診断用検査の強化、3)治療の増加・変化を考えなければならないとしている。

by internalmedicine | 2007-10-24 14:06 | 呼吸器系  

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