禁煙指導にエビデンスがあるのか?

医者なんだろうか?養老なる執筆活動家は多くの医師・学者が知恵を出し合ってきたステートメント(e.g. AHA関連:http://www.americanheart.org/presenter.jhtml?identifier=3004591) に論理だった科学的反論をすることなく、直上的にすべて否定する表明を行っている。
「(養老さんは)これまでも、反対される方と戦うとか、反論のコメントを出すということはありませんでしたから、今回もそうなるでしょう。反対するなら、どうぞ『ご勝手に』、ということですね」
彼は既に科学者ではない。(J-CAST
医者の資格をもつ氏が、健康への有害性の一定見解のある事象を一方的に否定する行動をとること事態、彼の医者としての品性を問われるだろう。

一方、わたしは、禁煙学会という存在そのものに疑念を抱いている

カナダのガイドライン(pdf:http://www.smoke-free.ca/pdf_1/smoking_guide_en.pdf)をみるとおもしろいのは、禁煙指導が、ProsとConsを上げて自己選択をさせることからはじまること。
喫煙状況・既往チェック→“喫煙に関してどう思うか”、“禁煙したいと思うか”と自問式チェック→介入方法を考慮というもので、日本の保険診療のがちがちなものとは異なるようである。

特におもしろいのは、以下のようなPros&Consを提示して、患者に禁煙を行うか判断をゆだねるのである。
喫煙のThe Pros
・緊張をほぐす
・集中力の改善
・食欲抑制
・娯楽性、リラクセーション
・社会的な関係を作る

喫煙のThe Cons
・即時性
・息切れ
・喘息悪化
・妊娠関連リスク
・不妊
・インポテンツ

・長期性
・心臓発作、卒中
・肺癌・他の癌
・慢性閉塞性肺疾患
・末梢性血管疾患

・環境的悪影響
家族の肺癌・心臓リスク増加
・喫煙者の子供は喫煙率が高い
・喫煙者の子供の乳幼児突然死症候群、喘息、中耳感染症、呼吸器感染症の発症率増加
・火災の危険性


禁煙のThe Pros
・健康状態の改善、寿命の増加
・味覚・嗅覚の改善
・金銭節約
・QOLの改善
・スポーツ、娯楽活動性パフォーマンス改善
・家庭、車、息、着衣の臭いの改善
・乳児・子供の健康状態
・異存症でない状態


禁煙のThe Cons
・離脱症候群
・嘆き
・倦怠
・喫煙による一休憩の消失
・喫煙友達無くなった
・喫煙関連の娯楽喪失
・体重増加


日本の禁煙指導は、“有無を言わせないぞ!”という指導になっているのではないか一度自問が必要と思う。

前置きが長かったが、プライマリケアでの禁煙指導ってのにもエビデンスが必要
やたらと介入したからと言って、禁煙成功率が上がるとも限らない・・・という話

Weekly versus basic smoking cessation support in primary care: a randomised controlled trial
Thorax 2007;62:898-903
禁煙に対して、より強化的行動サポートが基礎的行動サポートより有効かどうか、また、プライマリケア看護師が有効な行動サポートをもたらせるかは、まだ、エビデンスが十分とはいえない。

【方法】26のUKのGPにてランダム化対照トライアル施行し、925名の10本/日以上の925名の喫煙者に対して、basic supportとweekly supportをランダムにわけて行った。
すべての参加者に禁煙前に面会、禁煙日周辺で電話を行い同意を得たあと

1週後、4週後で面会(basic support)

週毎のサポートを引き当てた参加者は、

10日目、3週目に電話面接
2週目にニコチン置換療法服薬遵守性動機付けや禁煙再トライを指導


15mg/16時間ニコチンパッチをすべての参加者に投与

【結果】
469名のbasic support、456名のweekly supportのarm

禁煙数(%)と相違比率は、
4週目に、105(22.4%) vs 102(22.4%)、0.1%(95%CI -5.3%~5.5%)
12週目に、66(14.1%) vs 52(11.4%)、-2.6%(95%CI -6.9%~1.7%)
26週目に、55(10.7%) vs 40(8.8%)、-1.9%(95%CI -5.7~2.0%)
52週目に、36(7.7%) vs 30(6.6%)、01.1%(95%CI -4.4%~2.3%)

【結論】ニコチン単独療法絶対的禁煙率からとらえると、basic supportもweekly supportも有効でないというものである。プライマリケア禁煙治療は十分なサポートを伴った薬物療法で行われるべきであり単に適切に使用しているかどうか確認するだけで十分であり、そのサポートの必要な人たちはスペシャリストが好ましい。


世の中、心理専門家や看護師などは過大評価されているところがあり、なんでも彼らに任せればよろしいと思っているようで、マスゴミや教育関係者などにその傾向が強いようである。
人件費というのは大きな問題で、コストベネフィット分析が真に必要なのは、そのような触手の介入である。

by internalmedicine | 2007-10-26 09:12 | 呼吸器系  

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