細菌・ウィルス感染症抗体(液性免疫)はどの程度持ち続けているのだろう
2007年 11月 09日
Duration of Humoral Immunity to Common Viral and Vaccine Antigens
N Engl. J Med. Vol 357:1903-1915 Nov. 8, 2007 Number 19
急性のウィルス、細菌感染の回復は長期、あるいは生涯の免疫を獲得することがある。持続的な防御的駅性免疫は広く認められているが、その維持メカニズムは不明のままである
感染、ワクチン後の抗体維持の問題に関して、抗体titerの長軸的な解析をスケジュール化された(年毎)、イベントベースの採取で貯蔵されたサンプルを用いた解析
この研究の基礎として、抗原特異的抗体反応が環境的暴露、感染、ワクチンでブーストされるかを測定したもの
抗原特異的抗体産生期間(Duration of Antigen-Specific Serum Antibody Production)

No decay:減衰なし
感染、非増殖性ワクチン後抗体反応
種痘:92年(46-∞)
麻疹:3014年(104-∞)
ムンプス:542年(90-∞)
風疹:114年(48-∞)
EBV:11552年(63-∞)
水痘帯状疱疹:50年(30-153)
破傷風:11年(10-14年)
ジフテリア:19年(14-33)
B細胞免疫はかなり長く存在し、8つの抗原のうち、5つの抗原では、末梢血のメモリーB細胞数や抗体値には相関認めず
数多くの反応や繰り返しワクチンをうけたケースで、メモリーB細胞数は抗体価と相関しないことがあり、これは末梢血B細胞と抗体産生形質細胞が独立して細胞数を制御し、予防免疫維持に異なる役割を果たしているからと思われる。
長期液性免疫の2つの主なメカニズム
1)短期生存形質細胞によるメモリーB細胞依存性抗体産生
メモリーB細胞依存モデルでは、持続抗原刺激や再感染、交叉抗原や非抗原特異的ポリクローナルな活性化などで、メモリーB細胞が形質細胞に分裂・分化する。ポリクローナルなB細胞活性化は抗体の維持の鍵となり、抗体産生期間は、抗原の特異性にかかわらず同様となるべきである。
メモリーB細胞依存仮説では、いずれの感染後もB細胞どうし、少なくとも、末梢血メモリーB細胞においては相関が見られるだろう。メモリーB細胞と、抗体価は麻疹、ムンプス、風疹で認められたが他の種痘、水痘帯状疱疹ウィルス、EBウィルス、破傷風、ジフテリアでは認められなかった。前3つのウィルスは、血中抗体とメモリーB細胞は同様に安定し、独立して維持されており、直接の原因・結果関係を示さないepiphenomenonとして解釈されている。
2)長期生存形質細胞によるメモリーB細胞非依存性抗体産生
抗原への再暴露多数で、メモリーB細胞と抗体価の違いが見られることとなる。ワクチン、持続感染でboostiingの高率化した抗原は、メモリーB細胞量と抗体価とに非常に弱い相関であることで、この仮説が支持される。
同様に他の研究でも破傷風多数回免疫で持続性のメモリーB細胞増加が、長期的抗体価増加なしに認められていることでも支持され、メモリーB細胞と抗体産生が独立して調整されていることが示された。
長期生存する形質細胞は他のメカニズムで抗体を維持しているようで、CD20+B細胞欠損のヒトではこの仮説が支持されている。
by internalmedicine | 2007-11-09 15:12 | 感染症