βカロチンと認知機能;長期的観察で効果あり


Physicians's Health StudyII(PHS II)にて表題のごとき結果がでたようだ。


予想外のポジティブな結果・・・で、サプリメント業者、抗加齢学会諸氏大喜び?


A Randomized Trial of Beta Carotene Supplementation and Cognitive Function in Men
The Physicians' Health Study II
Arch Intern Med. 2007;167(20):2184-2190.
酸化ストレスは脳の老化に関与するから、抗酸化治療で、認知機能への好影響を与えるのではないかという仮説

低用量アスピリンとβカロチンを男性医師にランダムに振り分けしていたが、βカロチン(50mg 隔日)は中止され、別のアームでフォロー継続されたもの
この中止前近辺で、5956名を一般認知機能、言語記憶、category fluency task 評価
プライマリエンドポイントは、全般的スコア平均(zスコア)、セカンダリエンドポイントは4つの試験結果と結びつけた言語記憶スコア

1904名の新規参加者(平均治療期間1年)
平均全般スコアは有意にβカロチン群がプラセボより高い(0.047標準単位 P=.03)
言語記憶において、βカロチン長期サプリメント群はプラセボよりパフォーマンス良好(zスコア 0.063 P=.007)

短期的にはβカロチンは認知パフォーマンスにインパクトを与えなかったが、長期的にはベネフィットを認めた。



だが、注意すべきは、βカロチン・サプリメントによる利益性は以下のステートメントのごとくほぼ皆無であり、むしろ、特定の人たちには有害性が示唆されていることである。

注意すべきステートメント;
βカロチンに肺がん予防効果を観察しようとした2つの大規模トライアル(N Engl J Med. 1994;330:1029-35., N Engl J Med. 1996;334:1150-5. )で喫煙者、特にアスベストの肺がん頻度・死亡頻度増加が見られたこと。 胃癌、膵癌、乳癌、膀胱癌、直腸結腸癌、前立腺癌など他の癌、白血病、中皮腫、リンパ腫などでは予防効果が見られなかった。包括的死亡率は介入期間中・介入後期間で、女性で増加し、男性では増加しなかった。
3番目の大規模トライアル(N Engl J Med. 1996;334:1145-9.)、健康アメリカ人男性において、甲状腺、膀胱癌のリスク増加をのぞいて、βカロチンの効果はなかった。
ほかの2つのトライアルでは非メラノーマ皮膚癌予防効果のための研究で、その後の皮膚癌予防効果は認めなかった。(Lancet. 1999;354:723-9., JAMA. 1996;275:699-703.)。

大規模健康アメリカ人女性ではβカロチンの癌頻度発生への影響は認められなかった (J Natl Cancer Inst. 1999;91:2102-6.).

4つのβカロチントライアル (N Engl J Med. 1996;334:1150-5.,(N Engl J Med. 1996;334:1145-9, JAMA. 1996;275:699-703.), Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2000;20:230-5)
では、心血管リスクに関して評価された研究もあり、いづれもベネフィットを認めなかった。

健康女性ではむしろ卒中リスク増加示唆する結果もある (J Natl Cancer Inst. 1999;91:2102-6.)
Carotene and Retinol Efficacy Trial (CARET)では喫煙女性ではCVDリスク増加のリスクがあった
NIH CONFERENCE:National Institutes of Health State-of-the-Science Conference Statement: Multivitamin/Mineral Supplements and Chronic Disease Prevention ;2006)


PHS(Physicians' Health Study)は1982年9月フロリダの医師がコンピューターによるランダム数で割り当てをして開始して25年間

縦軸介入試験を根気強くできるのはアメリカの優れたところ、システミックなことが彼らは得意で、日本ではなかなかできないようだ。
地域的なコホート研究はできても、介入試験までは行われることがない。


さて、この上記結果をどのようにとらえて、今後、βカロチンをいかにあつかうか・・・問題になるだろう。有害性報告があるのでそう簡単にはいかないだろう。もし、有害性報告を無視した宣伝がなされるなら当然応分の法的処置がなされるべきだろう。

by internalmedicine | 2007-11-13 09:15 | 精神・認知  

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