アンチエージング御用報道について
2007年 11月 19日
「報道特集」という番組で、報道のジャンルにあたる番組なのかもしれない(http://www.tbs.co.jp/houtoku/index-j.htm)
日本では「アンチエージング」という言葉に対して動脈硬化などの分野の名の売れた先生たちがこの用語を率先して用いるという無防備な態度を示す。故に、素人集団であるメディアは、なおさら無防備になるのも当然なのかもしれない。
ところが、米国のメディアは“アンチエージング”に関して日本ほど無防備でなく、距離を置いた報道がなされている。
番組では日本臨床抗老化医学会理事長・松山淳医師とその治療内容が紹介された。氏の診療所の治療内容は「キレーション、血液クレンジング、血液改善療法、栄養療法、オゾンツボ打ち注射、デトックス、栄養点滴、ホルモン補充療法、ジェロビタール療法」などらしい。
キレーション(Chelation Therapy:Unproven Claims and Unsound Theories (http://www.quackwatch.org/01QuackeryRelatedTopics/chelation.html))を主体にしたものがキレーション、デトックス、血液改善療法で、ホルモン補充療法。それと、有効性。安全性のなさを理由にFDAでUSAでは輸入禁止されているGerovital(http://www.time.com/time/magazine/article/0,9171,915040,00.html、 Doctors's Medical Library)などである。
デトックス・キレーション治療に関しては以前述べたことがある(デトックス・キレーション治療など私的まとめ)。
私には、いづれも有効性・安全性が確立したとは思えない治療法である。
“米国ではAnti-Aging Medicine(抗老化医学)或いはLongevity Medicine(長寿医学)と呼ばれ、正式に米国医師会や医学会から認められた新しい医学の分野”と、松山 淳氏は主張しているようだが、cnn)では
“米国医師会は、アンチエージングを正式な医療分野とは認めていない;The American Medical Association does not consider anti-aging an official specialty."と記載している。
氏は、“アンチエイジングはビジネスになる!”などと、各講演をしているようで、事業的な方面での活躍が目立つ。
米国のアメリカアンチエージング学会(A4M)(←ポップアップがうるさいので注意を!)は非営利医学組織とのこと。1993年以降、寿命延長と加齢疾患に関して研究をサポートするために創設されたものだそうだ。90カ国19000名のメンバーを有するとのこと。
ここのウェブサイトの記載によると、
"加齢が自然で、さけられないというのは今は古くて消えゆく概念だ;the arcane, outmoded stance that aging is natural and inevitable" と書かれ、"正常な加齢に関する障害は生理学的な機能異常に基づく;the disablities associated with normal aging are caused by physiological dysfunction."と書かれている。だが、この考えは大いに異論ある考えであると前述のCNNは主張する。
私は以前から「禁煙学会」を含め「アンチエージング学会」は問題のある学会名であると主張している。「エージング」=「悪」と決めつけを前提とした議論は、果たして科学・学問であろうか?アメリカ医学協会(AMA)はアンチエージングを正式な診療科として認めていない。アメリカのアンチエージング専門医は従来の専門医を持たない医師が多く、米国の医療免許制度において、その処方資格に関して議論を惹き起こしている経緯もある。
くりかえすが、抗加齢学会の連中が主張するほどアンチエージングは医療専門家がその科学的・実践的存在意義がみとめられているものではない。
「Anti-Aging Medicine: The Legal Issues 」というレビューのサマリー(The Journals of Gerontology Series A: Biological Sciences and Medical Sciences 59:B682-B691 (2004)")の一部訳を紹介する。
「アンチエージング産業の詐欺事業の存在を評価するため、インターネットにてウェブサイトを調査し、アンチエージング製品と、詐欺(quackery)ともうけ主義(hucksterism)に関する消費者へのアドバイスを調査。連邦食品薬品化粧品法(Federal Food, Drug and Cosmetic Act)と修正条項をレビューし、特にサプリメントとヒト成長ホルモンに関して記述した論文である。アンチエージング詐欺やもうけ主義はインターネットを介して、クリニックでの宣伝アンチエージング治療が広がっている。
アンチエージング商品を製造する会社の多くで、よく用いられる15のだましのマーケッティングテクニックのレビューを紹介
連邦法律で、アンチエージング、加齢関連問題に対して、ヒト成長ホルモンを配布、投与することは違法であると規定した。
しかしながら、アンチエージングクリニックは栄え、だまされやすい、被害を受けやすい人たちに対してヒト成長ホルモンの投与がなされている。
アンチエージング詐欺は数百億ドル産業となり、巨大な金銭、健康、社会的コストを引き出す元になっている。
消費者や医療従事者も詐欺を認識するよう自分たちも勉強すべき時。
ヒト成長ホルモンのようなケースにおいて、法執行機関を強化する適切な法的なセーフガードが重要」
最後に、キャスターが最後に「玉石混淆であり、大きな学会などの認定医がいる施設・・・」と賜っている。
TBSって「ピーカンなんたら」で大問題を起こした会社である。そして、この「報道特集」は何十件の整形外科に行って正しい病名を得られなかったと主張する“被害者”を、その対面調査することなくその全ての医者が悪いと一方的に垂れ流した番組である。
フジテレビあるある大辞典ねつ造問題以来すこしは自重してた様な気もするが、最近、マスメディアのとんでも番組・とんでも発言がぽつぽつと目立つようになってきている。
あるあるの後継番組
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健康情報番組「S-コンセプト」
http://www.ktv.co.jp/info/press/071106.html
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医者どもを出して、そいつらが適当な発言をして、それで責任を負わせようともくろんでるのではないかと疑っているのだが・・・テレビ局のバラエティー番組でる医者って基本的にあんまり勉強してないと思うので・・・テレビ局の思うつぼになるのではないかと・・・危惧する
by internalmedicine | 2007-11-19 14:14 | Quack