老人における卵円孔開存(PFO)と原因不明の卒中の関係
2007年 11月 29日
卒中の原因・病型分類がなされているが、ルーチンの診断で約40%が原因特定できない。いわゆるcryptogenic、特発性となる。一つの可能性として卵円孔開存なのだが、右→左への心内シャントによるもので、卵円孔開存は一般人の約1/4である。
卵円孔開存の老人でのデータが乏しく、ホントに卵円孔開存原因の脳卒中ってあるの?と脳卒中専門医に疑問を投げかけるシーンを多く見かけることととなっていた。
55歳以上でも同様の比率でも同様の比率ではなかろうかということが示されている(Neurology 2000;55:1172-1179)。
Patent Foramen Ovale and Cryptogenic Stroke in Older Patients
N. Engl. J. Med. Vol. 357:2262-2268 Nov. 29, 2007 No. 22
卒中患者503名の連続ケースで、卵円孔開存を経食道エコーで確認
131名の年齢<55歳、372名の年齢≧55に分けて比較
特発性卒中群での卵円孔開存比率は、既存原因判明卒中群より若年群( 43.9% vs. 14.3%; オッズ比, 4.70; 95% 信頼区間[CI], 1.89 ~ 11.68; P<0.001)・老年群 (28.3% vs. 11.9%; オッズ比, 2.92; 95% CI, 1.70 ~ 5.01; P<0.001)とも多い。
心房中隔瘤と特発性卒中の事例の卵円孔開存の存在の相関は、原因判明卒中に比較して、若年患者 (13.4% vs. 2.0%; odds ratio, 7.36; 95% CI, 1.01 ~ 326.60; P=0.049)、老年患者 (15.2% vs. 4.4%; odds ratio, 3.88; 95% CI, 1.78 ~ 8.46; P<0.001)両群とも既知原因卒中に比較して非常に高い。
年齢、プラーク厚、冠動脈疾患の有無、高血圧の有無で補正した多変量解析にて卵円孔開存は若年者 (odds ratio, 3.70; 95% CI, 1.42 ~ 9.65; P=0.008) 、老年者 (odds ratio, 3.00; 95% CI, 1.73 ~ 5.23; P<0.001)とも独立して因子であった。
参考(http://www.kessen-junkan.com/2005061302/40.pdf)
奇異性脳塞栓症の特徴と診断基準(案)項目6 :ワルサルバ負荷のかかる動作や長期の座位姿勢は定義を決めることが容易でないことから,参考所見にとどめた確定診断:1 + 2 + 3 + 4 + 5
1.画像診断による脳梗塞素の確認
2.右左シャントの存在
3.静脈血栓の存在
4.塞栓機序を示す発症様式や神経放射線学的特徴
5.他の塞栓源や責任主幹動脈の高度狭窄性病変がない
6.ワルサルバ負荷のかかる動作や長期の座位姿勢での発症
疑似診断:1 + 2 + 3 + 4,1 + 2 + 3 + 5,もしくは1 + 2 + 4 + 5
参考所見:6
心房中隔瘤(ASA:atrial septal aneursm):心拍動に伴って心房中隔が左房側
と右房側に交互に突出する病態;心房中隔の基部の長さが11 mm 以上で,それが直線の状態からどちらかの,もしくは両側の心房側へ11 mm 以上突出する場合にASA と診断という事例
偶然見つかったPFO 症例には抗血栓療法は不要である.健常者の約1/5 は卵円孔開存を有しており,予防的な抗血栓療法は必要ない.奇異性脳塞栓症の確定診断例や疑似診断例では,再発予防に抗凝固療法が必要である.70 歳未満ではINR 2.0 ~ 3.0 で,70 歳以上では1.6 ~ 2.6 でワルファリンコントロールを行う.
by internalmedicine | 2007-11-29 12:08 | 運動系