COPDの予後推定は主治医は悲観的・・・日本では期待権とやらでさらに悲惨な状況になっているだろう

UKでは入院のうち3%がCOPD急性悪化、入院中央値16日間(中間四分位 9-29日間)で、ICUへ入室させるかを決定することが医師の“最優先事項”と考えられている。だが、予後推定は困難で、予後モデルと比較してアメリカの研究でも医師は悲観的になりやすいという報告(Am J Respir Crit Care Med 1996;154:959-67)があった。

UKでの研究
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Implications of prognostic pessimism in patients with chronic obstructive pulmonary disease (COPD) or asthma admitted to intensive care in the UK within the COPD and asthma outcome study (CAOS): multicentre observational cohort study
BMJ 2007;335:1132 (1 December), doi:10.1136/bmj.39371.524271.55
重症の閉塞性肺疾患の急性増悪にてICU入室患者対象の観察研究

イギリスの92ICUと3つの呼吸器高度依存ユニットで調査

517名(62%)が180日まで生存

臨床医の予測予後は悲観的で平均180日で49.7%と予測
Clinicians' prognoses were pessimistic, with a mean predicted survival of 49% at 180 days.

臨床医の予後最低5分の1とされた患者群では予測予後生存率は10%で、実際は40%であった


ICUの74%がデータベースでカバーしているのでこの調査の参加の有無間の差は実質的な差がない。この研究に参加した患者と参加してない患者では同様であった。

【結論】COPD・喘息で入院した患者を挿管のためICUに入室させるかどうかは臨床医の予後推定に依存するので、主治医事態が気づいていない予後に対する悲観性故に、ICU入室を拒否され助かるべき患者がICU治療されない危険性がある。



日本なんて、楽観的に患者や家族に話すと、「期待権」なる不思議な権利によりなぜか民事裁判で負けてしまうという恐怖感が医療関係者に蔓延しているし、蔓延せざる得ない状況である


【期待権】
将来一定の事実が発生すれば一定の法律上の利益を受けることができるという期待を内容とする権利。相続権・条件付権利など。希望権。(goo辞書


Wikipediaには
この権利は日本の法令により定義がなされているものではなく、権利の認められる範囲や、個々の権利がどの程度までの法的保護を受けるかは明確ではない。一般的には、「ある一定の事実が存在する場合に、その事実から予測される法律上の利益が将来的に発生することを期待できるとする権利」のように解釈されている。
・・・とどうにも、裁判で時に認められることがあるが、法律に規定のない不思議な権利であるようだ。

こんなものが幅をきかすと主治医は決して楽観的な予後推定はできない・・・あまりに非科学的な一方的な司法が勝手に作り上げた権利・・・是非、司法の世界から撤廃してほしいものだ

この期待権・・・
期待利益と期待権侵害を認定した事案として、東京地裁や宇都宮地裁足利支部判決があるが、高裁レベルでの判決はないようだ。( 参考 )
・・・とのこと・・・あまりこれに振り回されないことも大事かもしれない

ただし、日本の医療崩壊の本丸・・・【医療事故調査委員会】が現在準備中らしい

医療崩壊の最大原因は、患者サイドの“現実離れした過剰な医療への期待権”であり、それをゴールデンスタンダードする司法・行政の存在、そして、あおるメディアである。
そして馬鹿なのは日本医師会・・・まさに、「日本医師会の大罪」・・・この組織、ほんとものを考える能力のあるヒトっているのかしら?

by internalmedicine | 2007-11-30 14:14 | 呼吸器系  

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