喘息はCOPDのリスク要因
2004年 07月 14日
COPDとは
COPDへのリスク要因としての喘息:縦向き研究
Asthma as a Risk Factor for COPD in a Longitudinal Study
Chest. 2004;126:59-65
ここ数年、喘息とCOPDは別々の臨床経過を有する異なる範疇として見なされてきた。しかし、その明確な診断時の生理的特徴、異なるリスク要因にかかわらず、その2つの疾患は時間とともにお味様な特徴に進展する。
【目的】医師診断喘息とCOPDの進展の評価:3099名の成人
【デザイン・方法】前向き観察研究。12の呼吸系アンケート、11のスパイロメトリ肺機能機能20年間。生存率曲線(独立変数としてCOPDの発展までの時間)を喘息と喘息のない患者で比較
【結果】活動性喘息の患者(n=192)は有意にCOPDとなったハザード比が、非活動性喘息(n=156)と非喘息者(n=2751)に比較して高い。
喫煙歴や他の影響因子を補正した後でも、非喘息と比べて、活動性の喘息は慢性気管支炎症状獲得するリスクが10倍(95% CI, 4.94 to 20.25)で、肺気腫診断のリスクが17倍(95% CI, 8.31 to 34.83)、COPDのすべてのクライテリアを満たすリスク12.5倍 (95% CI, 6.84 to 22.84)
【結論】医師診断喘息はCB、肺気腫、COPDのリスク増加と関連。
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喘息は、COPD、肺気腫、慢性気管支炎と不可分な疾患ということがあらためて認識されたわけだが・・
われわれは統合失調症か? Are we shizophrenic?
というのは、Long-term Treatment Benefits With Tiotropium in COPD Patients With and Without Short-term Bronchodilator Responses (Chest. 2003;123:1441-1449.)のEditorialであり、それまでは、“COPDは気道閉塞が不可逆性である”というのを多くの教科書が一部ガイドラインでもこのことを喧伝している。日本の最近のガイドライン(COPD 診断と治療のためのガイドライン第2版)での気管支拡張後のFEV1/FVC<70%という表現は可逆性の否定そのものである。
しかしながら、tiotropium(Spiriva:今年から来年上市予定)をCOPD患者に使うと、平均FEV1は25%、250mL程度改善する(Taskin and Kestenら)さらに約半数のResponderが400mLも改善する。
“日本のガイドラインでは、気管支拡張剤としてβ2刺激剤が基本だが抗コリン剤でもよいとかかれており、“前後で200mL、12%以上の改善で吸入効果有りと判断する”とされているわけで、COPDは喘息と判断されてしまう。(このガイドラインは時限的なもので、役に立たないガイドラインであると断定しよう!(私が・・・))
ちなみにこの統合失調症的COPDガイドラインの診断の手引きは
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表1 診断の手引き
下記1~3の臨床症状のいずれか、あるいは、臨床症状がなくてもCOPD発症の危険因子、特に長期間の喫煙歴があるときには、常にCOPDである可能性を念頭に入れて、スパイロメトリーを行うべきである。スパイロメトリーはCOPDの診断において最も基本的な検査である。
1.慢性の咳蠍
2.慢性の喀疲
3.労作性呼吸困難
4.長期間の喫煙あるいは職業性粉塵曝零
表2 診断基準
表1の診断の手引きを参考にしたうえで、
1.気管支拡張薬投与後のスパイロメトリーでFEVl/FVC<70%を満たすこと
2.他の気流制限を来しうる疾患を除外すること
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話をもどすと・・・・
慢性喘息:軽症喘息では予後は良好であり、重症への進展は稀。しかし、グループとして喘息無し群より喘息を有する人たちは肺機能低下が甚だしい、喘息無しの喫煙者よりは程度がさほどないが・・・
慢性喘息では治療で改善する。しかし、5%未満の喘息で治療に奏功しない人たちがいる。合併症や死亡リスクという面で問題である。
COPDを速く見いだすことと、喘息患者のコントロールが真に良好かどうか・もし良好でなければ、その後のために治療を促進する必要が出てくるというわけである。
<あきれ果てている事例集>
・ピークフローモニタリング(PEF)指導してその後来なくなった患者さんたちのなかで、他医にかかりPEFもみず、それっきりになり治療がうまくいかず結局元に戻る・・・何考えとんじゃ
・こともあろうに気道閉塞の可逆性をみるのに抗ヒスタミン剤と持続性ステロイド(背レスタミン)投与するアホ(当然、スパイロ測定せず)
・持続性β2刺激剤3種類同時投与:経口(メプチン錠)・経皮(ホクナリンテープ)・吸入(セレベント)
by internalmedicine | 2004-07-14 15:05 | 呼吸器系