「インフルエンザにおける異常行動」の解説

なにげに配布されている小冊子をみたら・・・かなり興味あることが書かれていた。

著者は横浜市立大学の横田 俊平 教授

感染症 通巻 第218号 2007.11 p31-35
2004/2005年のインフルエンザシーズンのインフルエンザ随伴症上の調査研究にて
インフルエンザ随伴症状は、けいれん(0.6%)、熱性けいれん(2.6%)、異常言動(10.5%)、肺炎(1.4%)、中耳炎(1.3%)などの発症頻度で、使用薬剤はアセトアミノフェンとオセルタミビルが多く、抗菌剤や他の抗インフルエンザ剤は少ない。

発症時期は、けいれん・熱性けいれん・異常言動などの中枢神経症状は第1・第2病日に集中。中耳炎、肺炎などは第5~7病日に発生。
アセトアミノフェン使用群では異常言動、けいれん、熱性けいれん、意識障害などの中枢神経症状が多く出現していたが、高熱を発した患者に使用されたと推定され、むしろ結果として、発熱と中枢神経症状との関連性が示唆された。
オセルタミビル使用と異常言動、けいれん、熱性けいれん、意識障害との強い関連性は認められなかった。

インフルエンザ随伴症状としての異常言動の内容は、大脳皮質、辺縁系を含む側頭葉刺激症状と考えられ、側頭葉の興奮を促す何らかの機構が働いている可能性があり、もちろんオセルタミビル使用群と非使用群との内容の差はないという報告が書かれている。



側頭葉外側皮質症状と側頭葉内側下面(海馬・扁桃体)症状に2分できる異常行動の実態
①おびえの症状
②幻視、幻覚、感覚の混乱
③うわごと、歌う、無意味な動き
④怒る、泣く、ニヤリと笑う
⑤口にものを入れる(oral tendency)


側頭葉外側皮質症状は動物幻視、聴覚過敏、音楽幻聴など
側頭葉内側下面症状は恐怖発作、怒り興奮、恍惚感、笑い発作、oral tendencyなど



背景となる病態に関して、脳内のサイトカインストームを含めた解説も書かれている。


これをみると、いままでのインフルエンザに関する臨床的描出が不十分であり、特に、異常言動に関する記載が今回明らかになったということが改めて分かる。臨床的描出がいかに大事か・・・あらためて知らされたことと、メディアの姿勢にあらためて・・・

by internalmedicine | 2007-12-19 18:24 | 感染症  

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