肥満、無呼吸有無での視床下部・下垂体・副腎系の反応

肥満、それも無呼吸の有無で、HPA系の過剰反応があると知られていた。睡眠時無呼吸患者そのものでは血中コルチゾール濃度の日内変動への影響を与えず、内臓肥満そのものの影響があるという報告(Am J Physiol Endocrinol Metab.2007; 293: E466-E474 )がある。


一般に、肥満者では視床下部・下垂体・副腎系(HPA系)ドライブの増加をもたらし、奇異的に血中コルチゾールは低~正常を呈する。糖質コルチコイドのフィードバック増加のためと考えられる( The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol. 86, No. 9 4109-4114
肥満者は正常のサーカディアンリズムで正常の血中濃度を示すことが多く、体内脂肪によって、薬物投与試験により若干の反応を示し、女性では脂肪分布の量に依存する報告(Clinical Endocrinology Oct 2001. Vol. 55 (4) 447-454 )などある。


上述の報告と異なる報告

Hypothalamic-Pituitary-Adrenal Axis Activity in Obese Men with and without Sleep Apnea: Effects of Continuous Positive Airway Pressure Therapy
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism Vol. 92, No. 11 4199-4207

Study I:45名の肥満男性(無呼吸有無両群)と非肥満対照を4夜スリープラボと24時間コーチゾル測定
Study II:38名の肥満男性(無呼吸有無両群)と非肥満対照を4夜スリープラボ後ヒツジCRH投与後

【結果】睡眠パターンは肥満者と非肥満者と同様
24時間血中コルチゾール値は肥満対照者で高く、肥満無呼吸患者で中間、肥満対照でもっとも低い (8.8 ± 0.4 vs. 8.1 ± 0.3 vs. 7.5 ± 0.3 µg/dl, P < 0.05)

CPAPは無呼吸患者でそのコーチゾル値を低下させる(差 –0.7 ± .4 µg/dl, P = 0.1)
CRH投与にて両肥満群とも、非肥満対照者にくらべ最も高いACTH反応を示す。
コーチゾル反応は全群とも差がない


内分泌関係はその解釈が難しく、肥満に関してなおさら・・・
ホルモン濃度の評価は、基礎濃度(血中・尿中・唾液中など)、動的変動の研究(様々なニューロペプチドや心理的ストレスや、抑制物質などを用いた)、混合した栄養成分による影響などがある。尿中のコーチゾル代謝産物直接測定で末梢のコーチゾル代謝の変化が考察されるが、多くの考察も必要となろう。異常肥満のHPA系の変化はインスリン抵抗性と関連があり、それは代謝性疾患、心血管疾患発症の感受性を変化させることも実際に示されている。HPA系のわずかな変化を検知できるパワーを持った一つのマーカーは存在しない。多くのパラメーターが故に必要となる。たとえば、尿中遊離コーチゾル、特に夜間、そして唾液遊離コーチゾルは特異的な状況下での動的な変動を見るために用いられている。( Ann. N.Y. Acad. Sci. 1083: 111–128 (2006) )


内臓脂肪評価・Glucocoriticoid受容体などとの関係とをうまく整理しないと・・・無呼吸が関係しているかどうかまだわからない

by internalmedicine | 2007-12-20 11:04 | 糖尿病・肥満  

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