重症敗血症患者に対する強化インスリン治療とヒドロキシエチルデンプン(HES)
2008年 01月 10日
また、クリスタロイドかコロイドかの議論は30年ほど前から聞いたことのある議論である。
・・・えぇ・・・またぁ・・・というのが率直な気持ち・・・ではあるが・・・集中治療の知識をいかに持っているかの試金石にもなる部分なので、まぁ勉強しておこう・・・
集中治療には"Bundle”という考え方がある(2005-10-07 16:53 )。個別介入より総合的に行ったときにそのアウトカム改善をもたらすというもので、この中には血行動態モニタリング、抗生剤早期投与などである。血糖の厳格なコントロールやクリスタロイド・コロイド、それに別項目でとりあげたステロイドがここにどう入り込むかが常に話題のも当然なのだろう。
Van den Bergheらの研究(NEJM 345(19):1359-1367 Nov. 8 2001)では、血糖を80~110 mg/dl(4.4-6.1 mmol/L)に維持することで入院死亡率を10.9%から7.2%に減少させ、臓器障害を低下させることが判明。この効果は対照群と比較して5.1%も増加する心臓術後の患者のブドウ糖8~12g/時間を点滴されている場合とくに顕著である。
さらにかれらのフォローアップ研究(N Engl J Med. Vol 354(5):449-461 Feb 2 2006)で、手術を受けていない重症患者、高度ブドウ糖負荷のない患者にはベネフィット効果や生存率改善効果がみられないことが判明した。さらにそのような治療により低血糖イベントの増加が生じることが判明した。
重症敗血症患者では強化インスリン治療が臨床アウトカムを改善するかどうか不明だが、広くadvocateされていることは確かである。
それと、あいもかわらず、コロイドかクリスタロイドかの議論(e.g. Cochrane database)
動物実験ではヒドロキシエチルデンプン(HES)がCrystalloid液を比較してエンドトキシン血症時の微小循環改善、組織ダメージ損傷を軽減するという知見(J Appl Physiol 1994;77:1507-1518)がある一方、凝固障害や・急性腎障害などの重症副作用も考察されるのである。
重症敗血症に対する、ランダム他施設研究、2×2要因トライアル
・強化インスリン vs 通常のインスリン治療
・10%ヒドロキシエチルデンプン(HES)200/0.5 vs 補正リンゲル乳酸
28日死亡率と平均臓器障害スコアがプライマリエンドポイント
Intensive Insulin Therapy and Pentastarch Resuscitation in Severe Sepsis
N Engl J Med. Vol 358 (2) 125-139 Jan 10, 2008
敗血症性ショックにおける至適血糖コントロール・補液蘇生はまだchallengeのままである。
500名を超えるこの研究で、強化インスリン治療による正常血糖に維持するこころみと至適補液としてpentastarchとRinger乳酸を評価したもの
28日生存率や臓器機能に対して強化治療のbenefitはなかった
強化治療群においてより低血糖があり、pentastarch群に急性腎機能障害が多かった。
これら2つの項目は、未だBundle治療の中に入り込めない・・・?
血漿増量剤:HES製剤(ヒドロキシエチル デンプン)(Hydroxyethylated starch):サリンヘス、ヘスパンダー(ヒドロキシエチルデンプン6%、塩化ナトリウム 0.5%など)
by internalmedicine | 2008-01-10 08:22 | 集中・救急医療