糖尿病患者へのスタチン治療メタアナリシス:より広範なスタチン治療を!
2008年 01月 15日
結論から言えば、ベースラインのLDLに関わらず糖尿病患者になるべくスタチンを利用するよう努めた方がよいという話になる。・・・エディトリアルでは今後この知見がガイドラインに加わるだろうという話に・・・
ちなみに、今回検討のベースラインLDLは 1型・2型糖尿病とも 3.4mmol/Lで、ほぼ132.6 mg/dl程度である。
1型・2型糖尿病両病型とも脂質異常と関連があるが、パターンは異なる。
2型糖尿病では、TG濃度が高いがHDLコレステロールは比較的低い
1型糖尿病では2型糖尿病よりTGが低い傾向にあり、HDLは幾分高い
動脈硬化と関連のあるsmall dense LDLの増加をマスクすることもあるが、両疾患とも、LDLコレステロール濃度は一般と同程度
血中LDLコレステロールと冠動脈疾患のリスクの一次回帰が様々な住民対象観察研究で示されている。先進国での典型的なコレステロール値の範囲下でも同様であった。
Multiple Risk Factor Intervention Trial (MRFIT)の36万人の検討では1 mmol/Lあたり、冠動脈疾患死亡率を50%へらし、それはベースラインの血中コレステロールとは無関係な効果であることが示されている。
ベースラインのMRFIT評価による糖尿病歴500名男性において、血中コレステロールと、冠動脈リスクはその程度において同等だが、絶対的リスクは糖尿病無しの対照群に比べて5倍である。
mmol/L表示に関して・・・
HDL・LDL mmol/L → mg/dL 39で掛ける
トリグリセリド mmol/L → mg/dL 89で掛ける
血糖 mmol/L → mg/dL 18で掛ける
クレアチニン μmol/L → mg/dL 88で割る
<http://www.faqs.org/faqs/diabetes/faq/part1/section-9.html>
スタチン治療は糖尿病患者における閉塞性血管イベントリスクを減少させるが、特異的アウトカムへの効果に不確実性があり、糖尿病の種類、脂質特性、他の要因によりその効果が異なるかなど不明である。
Efficacy of cholesterol-lowering therapy in 18 686 people with diabetes in 14 randomised trials of statins: a meta-analysis
The Lancet 2008; 371:117-125
【方法】18,686名の糖尿病患者(1型1466名、2型17,220名)
14のスタチンに関するランダム化トライアル、糖尿病無しの71370名を比較
LDLコレステロール、1.0mmol/L毎の比重推定を推定
【結果】平均フォローアップ4.3年、糖尿病患者において3247のmajor血管イベント
糖尿病患者における、mmol/Lあたりの全原因死亡率は9%(リスク比 [RR] 0·91, 99% CI 0·82–1·01; p=0·02)
糖尿病無しの患者では13%でほぼ同様(0·87, 0·82–0·92; p<0·0001)
この所見は糖尿病患者における、血管合併症の有意な減少を反映しており(0·87, 0·76–1·00; p=0·008) 、非血管性死亡率は反映していない (0·97, 0·82–1·16; p=0·7)
糖尿病有りの対照者のLDLコレステロールmmol/L減少につき大血管イベント減少21%有意に減少 (0·79, 0·72–0·86; p<0·0001)しており、糖尿病無しの効果と同様 (0·79, 0·76–0·82; p<0·0001)。
糖尿病患者では、心筋梗塞・冠動脈死亡 (0·78, 0·69–0·87; p<0·0001)、冠動脈再建 (0·75, 0·64–0·88; p<0·0001)、卒中 (0·79, 0·67–0·93; p=0·0002)減少が認められる
糖尿病患者において、スタチン治療の比例的効果は、血管疾患既往や他のベースラインの特性に無関係である。
5年後、糖尿病患者において、1000名割り当てスタチン治療に対して、42(95% CI 30-55)がメジャーな血管イベント減少をもたらすこととなる。
【結論】スタチン治療は血管イベントリスクのある全糖尿病患者に対して、投与を考慮すべきである

by internalmedicine | 2008-01-15 09:16 | 動脈硬化/循環器