クループ :NEJM解説

一週間ほど前、小児を珍しく診療したが、“慢性のクループ”と呼ばれていると母親から聞かされた。なんだそりゃ・・・と思いながらも、確かに、この辺の言葉を一度整理しときたいと思ったのが先週。


そういうときにNEJMにクループの解説

Croup N Engl J Med. (4) Vol 358:384-391 Jan. 24 2008

当番医・当直などでもっとも怖い病気の一つ急性喉頭蓋炎(→みにつまされる記載)が少ないのが気に入らないが・・・疾患概念の整理ためおつきあいを

その急性喉頭蓋炎(epiglottitis)については原文で触れている箇所は少ない・・・
喉頭部の急性閉塞(e.g. 喉頭蓋炎、異物、喉頭蓋炎の血管神経性浮腫)の診断は重要である(Textbook of pediatric infectious diseases. 5th ed. Philadelphia: W.B. Saunders, 2004:252-66.、 Current clinical topics in infectious diseases. New York: McGraw-Hill, 1981:1-30.)。
喉頭蓋炎はクループと異なり、クループ様咳(吠え声やアシカ類似音)がない;子供が剤から動こうとせず、顎を前に押しだして、坐位をいやがったり、拒否する;吸気困難そのものでなく、それから生じる不安・心配を訴えるだけのこともある。上記所見で診断するので巨大化した喉頭蓋をレントゲンで調べることで確認できるが必要となることは稀。
とのみ記載している。

喉頭蓋炎とクループの比較した図がある

喉頭蓋炎        クループ
解剖 supraglottic     subglottic
原因 細菌性;H. infl.    ウィルス:パラインフルエンザなど
年齢 3-7歳、成人     0.5-3歳
発症 6-24時間      24-72時間
有害 劇的          軽症ー中等
咳嗽 稀             頻回
嗄声 稀             頻回
白血球 増加           正常

(Synopsis of Pediatric Emergency Medicine 著者: Gary R. Fleisher, Stephen Ludwig)



さて話をクループに戻すが・・・


19世紀、全てのクループ様(crouplike)疾患はジフテリアと考えられていて、故に、それ以外を仮性クループと読んだのがはじまり。今日“クループ”は、様々な程度の吸気性のstridor(喘鳴)を伴う、barking cough(犬がほえるような咳)、後頭部の閉塞による嗄声に特徴付けられた様々な呼吸器疾患を呼ぶ(原文:the word "croup" is used to refer to a number of respiratory illnesses that are characterized by varying degrees of inspiratory stridor, barking cough, and hoarseness due to obstruction in the region of the larynx.)

不幸なことに、terminologyは解明しつつあるが、その分類が曖昧である。たとえば、"laryngotracheobronchitis"(喉頭気管気管支炎)は痙攣性クループや喉頭気管炎などを記載するために用いられるなどである




Spasmodic croup
Sudden night onset of inspiratory stridor; associated with upper respiratory tract infection, without inflammation



Acute laryngotracelitis
Inflammation of the larynx and trachea



LTB:Lanryngotracheobronchitis and LTBP:Laryngotracheobronchopneumonitis(including Bacterial Tracheitis)
Inflammation of the larynx, trachea, and bronchi or lung; usually similar in onset to laryngotracheitis, but with more severe illness)


Laryngeal Diphteria
Infection involving the larynx and other areas of the airway due to Corynebacterium diphtheriae, resulting in progressive airway obstruction



クループ :NEJM解説_a0007242_927060.jpg


他のクループ治療のガイドラインに関して後日触れたいが、軽症でもデキサメサゾン 0.6mg/kg経口・筋肉投与が推奨されている。

この記載のまとめ・・・
クループは、痙攣性クループでも、喉頭気管炎でも、両親や患者を脅かす幼児疾患としては頻度の多いものである。vignetteとして記載されているような子供でも、短期的副腎ホルモン治療が標準治療となっている。経口dexamethasone (0.6 mg per kilogram)単回投与がもっとも実践的。この治療で反応しない患児に対して追加的投与は推奨されない。この初期治療に反応しない場合は、症状の重症化に応じて、ERや入院評価がなされる;そのようなケースでは、レントゲンにて喉頭気管気管支炎(LTB)の可能性、喉頭気管気管支肺炎(LTBP)のような場合はシーズン中のインフルエンザ検査を含むさらなる検査が必要。
重症の症状の子供はエピネフリンネブライザー(2.25%racemic epinephrine 0.5mlを4.5mlの生理食塩水に希釈し、1:100の5ml溶液)。外来時は気道閉塞改善後も2時間経過をみること。重症の場合は頻回になるが、挿管回避になることが多い。
LTBやLTBPを示唆する、たとえば、bandの増加を示す白血球数が多い・少ないや、レントゲン上肺炎を示したり、気管の軟部組織の肥厚など野場合は、抗生剤、バンコマイシン、cefotaximeなどを投与すべきで、入院となる。気管内挿管が施行される。

by internalmedicine | 2008-01-24 09:27 | 感染症  

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