“mitochondrial genetic bottleneck”の実証報告

Newcastle UniversityのPatrick Chinnery教授のミトコンドリア疾患の遺伝性が予測困難な理由の一つを解明したとのこと

遺伝子変異mtDNAがパスするのが少数か大多数かで、疾患を有さない子供と重度の子供をわけることとなる。女性の卵子はその成長のごく初期において形成される。
precursor cellが多数の卵子に分かれるとき、卵子がランダムに分布されると思われる。
卵子同士で、変異mtDNAの非常にばらつきが多いので、変異遺伝子の量そのものも次世代に伝わる音となる。
この違いが疾患重症度の違いとして現れるのであるという考え



mtDNA分子の少数しか次世代に通過しないという “mitochondrial genetic bottleneck”


チャンスのゲームなのである。赤玉・白玉を混ぜているところからランダムに取り上げたときに、非常に少数の赤玉とさらに非常に少数の白玉をつかむことがある。これが変異mtDNAの量がことなる理由なのである。このボトルネックを通過後、ミトコンドリアの形質が発現するわけだから、変異確率が個体にとってはランダムとなる。

Nature Geneticsに27日づけで、Chinneryらの国際チームは、このbottleneckが現実に存在し、卵子を形成するときにドラマティックにmtDNAの数が減少することを示した。

重症度の変異が大きいこと、卵子が増加するにつれ、子供に到達する異常ミトコンドリアの数が増加すること。このケースでは子供の方が母親より影響を受けやすくなる。

ミトコンドリア疾患は5000名に一人と考えられているが、正確な異常mtDNAの比率が既知となったときに、子供への影響するか、どのように影響するか科学者はまだ予測できない。
この研究により今後の疾患リスク予想に役立つかもしれない仕事である。
情報ソース:http://www.eurekalert.org/pub_releases/2008-01/wt-mc012508.php


この辺の説明(ミトコンドリアDNAの遺伝的均一化促進方法 特許申請)を合わせ見るとちょっと分かった気がする
ミトコンドリアは多様かつ多数のゲノムDNAのコピーを運搬し、例えば哺乳細胞およびサッカロミセスセレビシエ細胞では、ミトコンドリアDNA(mtDNA)のコピーがそれぞれ10^3から10^5個および30~100個存在する。mtDNAはミトコンドリアの機能に不可欠である。変異の獲得はミトコンドリアのゲノムの方が核のゲノムより約10倍速いので、各細胞には多様な変異を伴う異質mtDNAのコピーが存在していると推測される。酵母ないしヒトでは、核ゲノムとは異なり、ミトコンドリアゲノムの対立遺伝子は細胞分裂周期中に素早く分離することが多く、酵母では細胞分裂の10~20サイクル中に、哺乳類では2ないし3継代中に、各細胞または個体のmtDNAは全て遺伝子的に均質になる(この現象を「ホモプラスミー」と言う)。
哺乳類の卵母細胞の分化過程でホモプラスミーが成立する。変異体ホモプラスミー細胞が確立する際、 mtDNAの単一コピー上の変異体対立遺伝子は増殖して、多数の細胞内小器官DANの完全なコピーの集団を形成するが、それは無作為に選択したmtDNA の1個のコピーを鋳型にして子孫mtDNAの全てを複製するかのようである。mtDNAが個別に複製して子孫に無作為に分配されるならば、細胞分裂している各酵母細胞中のmtDNAの数は2ないし6個、あるいは約3個となるはずである。しかし、計算で求めたmtDNAのコピー数はmtDNAの実際のコピー数よりもはるかに少ない。従って、ホモプラスミー細胞は能動過程により生成する。ヒトでのヘテロプラスミーは、ミトコンドリア疾患として知られている重篤な遺伝性疾患に関連して、または高齢者の幾つかの組織中に観察される。このような疾患の原因となる遺伝子欠損はmtDNAまたは常染色体のどちらかにある。最近、ホモプラスミー形成は核遺伝子の制御下にあることが示された。




Random Genetic Drift Determines the Level of Mutant mtDNA in Human Primary Oocytes
Am J Hum Genet. 2001 February; 68(2): 533–536.

by internalmedicine | 2008-01-28 09:48 | 医療一般  

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