レジャーでの運動不足はテロメア長短縮をもたらす など

テロメア長に関する臨床がらみの報告が多くなってきた。

レジャーでの運動不足はテロメア長短縮をもたらす

The Association Between Physical Activity in Leisure Time and Leukocyte Telomere Length
Arch Intern Med. 2008;168(2):154-158.
【序文】 身体不活動は多くの加齢疾患の重要なリスク要因である。白血球telomereの動態(テロメア長と 加齢依存テロメア長短縮 ) は、加齢の生物学的指標というふれこみである。
故に、直近の12ヶ月におよぶ娯楽時間における身体活動性レベルが白血球テロメア長(LTL)と相関するかどうか正常健康ボランティアでしらべたもの
【方法】 2401の白人双生児ボランティア、2152名の女性、249名の男性で、身体活動レベル、喫煙状況、社会経済的状況に関するアンケート調査
LTLを平均terminal restriction fragment lengthにて測定、年齢補正、他の因子補正したもの
【結果】 LTLは娯楽時間身体運動活動性と相関(P<0.001)
この相関は年齢、性別、BMI、喫煙、社会経済状態、仕事時の身体活動性補正にても有意であった
もっとも活動性のあるLTLは最小活動者群の200核酸長長い (7.1 and 6.9 kilobases, respectively; P = .006).
この所見は、身体活動性レベルの一致しない双生児ペアの小グループで確認された(平均の上では、より活動性の高い群のLTLは88核酸長い; P = .03).

【結論】 不活動性のライフスタイル、喫煙、BMI、社会経済状態の低さが、LTLに影響をあたえ、加齢プロセスを促進している。このことが定期的な運動への抗加齢作用を促進する可能性がある。



ちょっと復習・・・

酵素 テロメラーゼがテロメア末端の塩基対に加わり、若年細胞ではテロメラーゼはテロメアを非常に多く摩損せしめる。細胞分裂を繰り返すにつれ、テロメラーゼが十分でなくなったとき、テロメアは短くなり細胞も加齢する。
テロメラーゼは精子・卵子では活発であり、次世代に伝わる。生殖細胞がテロメラーゼを持たないなら、そんな細胞の組織体は消滅に向かうだろう。



テロメアはTTAGGGの反復シークエンスからなり、対側ではAATCCCの配列となる。人の血液ではテロメア長は、生下時8000から3000塩基対であり、老人となると1500塩基対まで減少する(ちなみに一つの染色体の塩基対は約1億5千万)。
細胞分裂のたびに体細胞は30-200塩基対が減る
細胞は通常50-70回分裂し、テロメアは細胞が老化、死亡、癌などの遺伝子変化するまで次第に短くなる。心筋のような分裂しない細胞からなる組織ではテロメアは短くならない。
なぜテロメアのようなものを持っているか?もし無ければ、細胞分裂の時間は短くなるだろう。そして、テロメアは遺伝子を喪失せずに分裂する。細胞分裂は新しい皮膚、血液、骨、他の細胞と必要なときに成長できることとなる。テロメアがなければ、染色体は互いに融合し、細胞の遺伝子青写真も破壊し、細胞機能障害をきたし、癌もしくは死に至る。壊れたDNAは危険であり、染色体損傷を感知し、修復する能力を有することとなる。細胞の分裂をとめさせる方法としてそなわってるのである。





参考:http://learn.genetics.utah.edu/features/telomeres/




テロメア関係の最近のトピックスを拾い集めてみた

出生時父親の年齢が生下時テロメア長の重要な決定因子
Offspring's Leukocyte Telomere Length, Paternal Age, and Telomere Elongation in Sperm
PLos Genetics Early Online Release
出生時に父親の年齢が高いほどテロメア長が長いという報告があり、
男女3365名でSouthern blotでLTLを測定
父の年齢が増加する毎に、生下時LTLは長くなる、半数から2倍までの範囲で増加する。
精子のテロメア長の分析で長くなったテロメアが見つかる。
父親の精子でのテロメア長に関連した減少と言うことになる



White Blood Cells Telomere Length Is Shorter in Males With Type 2 Diabetes and Microalbuminuria
Diabetes Care, November 1, 2007; 30(11): 2909 - 2915.
2型糖尿病と微量アルブミン尿症(MA)の患者は(terminal restriction fragment [TRF]) 長が短く、MA無しに比べよりarterial stiffnessが増加する。加えて、TRF長は年齢、albumin excretion rate (AER)、nitrosative stressと相関。
TRF長は生物学的年齢を表し、MA有りの2型糖尿病患者ではarterial stiffness増加と関連する



双生児女性での住民コホート研究ビタミンD濃度とLTLは相関し、加齢へのポジティブな影響の可能性がある
Higher serum vitamin D concentrations are associated with longer leukocyte telomere length in women
American Journal of Clinical Nutrition, Vol. 86, No. 5, 1420-1425, November 2007


以前取り上げたもの
 ↓
テロメア長とCHDリスク関連有り、スタチン治療で予防可能? ( 2007-01-15

by internalmedicine | 2008-01-29 09:48 | 医療一般  

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