妊娠中のストレスが胎内の子供の統合失調症発症に関連する

極端な心的ストレス状態、たとえば近親者の死亡などを経験した妊娠女性はその胎内のこどもへ統合失調症などへの精神疾患リスクを生じることが示唆された。
従来から母体への心的状態は胎児へ影響をあたえることがある程度知られていた。たとえば、低体重児や未熟児などのリスクを増加することなども知られていた。
統合失調症の原因として胎児期の脳の早期発達中にその構造的・機能的異常が考察され、妊娠中の環境要因や関連遺伝子の関連が考察されてきた。
イギリス、マンチェスター大学のAli S. Khashanは1973-1995年での138万のデンマークでの出生記録から、母体妊娠中に発生した重度の心的ストレスの事例を用いて、妊娠中特に、妊娠第一期(first trimester)での母体ストレスと統合失調症発生の関連を示した。

Arch Gen Psychiatry. 2008;65[2]:146-152.

出生前母体への客観的なストレス測定された影響が子供の神経発達、特に統合失調症へ影響を与えるかの評価
妊娠第一期での暴露との関連が強いという仮説した

【デザイン】 Population-based study.
【場所】 デンマーク
【参加者】 1373-1995年の138万人デンマークの出生コホート
ストレス暴露は、近親者の死亡、癌・急性心筋梗塞、卒中症状診断と判断された場合と定義
(妊娠前6ヶ月から妊娠中)
子供を10歳の誕生死亡・移住・分裂病発症、あるいは2005年6月30日までフォロー
【メインアウトカム】 統合失調症
【結果】 分裂病・関連疾患のリスクは妊娠第一期中に発生した近親者の死亡により増加する(補正相対リスク, 1.67 [95% 信頼区間, 1.02-2.73])
他の妊娠期間、妊娠前6ヶ月間のの近親者の死亡は統合失調症のリスクに関連しない
【結論】住民ベース調査では、妊娠第一期での母胎への重度ストレスが子供の統合失調症のリスクを増加させる。この所見は全住民の重度ストレッサー暴露研究
からの生態学的研究エビデンスと一致し、環境が胎児・胎盤・母体相互作用に影響を与えるということが示唆される。



統合失調症は社会経済上も大きな影響を与える。妊娠早期の母体へのストレス軽減介入は社会的にも有用かも知れない。そういう環境整備を配偶者・家族・社会が配慮すべきだろう。妊娠中の母体への精神的健康がきわめて重要ということで非常に示唆に満ちた報告だと思う。

by internalmedicine | 2008-02-05 09:00 | 精神・認知  

<< オゾン、 オキシダント防御遺伝... こども・思春期メタボリックシン... >>