認知症発症と葉酸・ビタミンB12、ホモシステイン濃度の経時的変化

韓国の研究者の発表によると、葉酸濃度基礎値が重要で、さらにそれより、葉酸、ビタミンB12、ホモシステイン濃度の経時的変化が影響をもたらしているようだという報告

認知症に伴う食行動の変化による結果的なものを否定できないと思うのだが、どうなのだろう。筆者たちは韓国の葉酸欠乏性のサプリメント事情も関係あるとしているのだが・・・


Changes in folate, vitamin B12, and homocysteine associated with incident dementia
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 5 February 2008. doi:10.1136

medpage(http://www.medpagetoday.com/Psychiatry/Dementia/tb/8277)から
葉酸欠乏が65歳以上の認知症発症とアルツハイマーのリスク3倍増加と関連するとのことで、研究開始時の葉酸欠乏の対象者では2.4年フォローアップで認知症3.5倍であった。

2001-2003年に掛けて、625名、平均年齢71.6、ベースに認知症のない対象者追跡を行い結論をだしたもの

血中葉酸、ビタミンB12、ホモシステイン値をベースラインとフォローアップ評価で用いたところ、ベースラインで3.5%の葉酸欠乏、19.7%のホモシステイン値低値、17.4%のビタミンB12値低値をみとめた。
ベースラインでの葉酸低値は、認知症の推定要因となり得た (OR 3.20, 95% CI 1.01 to 10.17) 。研究開始時のビタミンB12とホモシステイン濃度では関連性を認めない。

研究終了時、認知症45例発症(8.7%)

このうち、34(6.6%)がアルツハイマー病、7(1.4%)が血管性認知症、4(0.8)が別の認知症

認知症発症は加齢、低教育、認知異常とdisabilityがあるほど、身体活動性が低いほど、apolipoprotein e4 alleleの存在などが関連する

フォローアップ中、認知症は葉酸減少するほど、ビタミンB12が少なくなるほど、ホモシステイン濃度がやや増加するほど増加しやすいことも判明。しかし、認知症とホモシステイン濃度の関係は体重変化補正でその相関を維持できなかった。
この研究では、研究者たちは、認知症はベースラインの濃度そのものより経時的濃度変化により相関を認めた
この血中濃度の変化は、MCIの時期の神経変性過程に対して影響をし、逆も真なりで、神経変性がこれらの血中濃度の変化に影響をあたえるのか?認知症発症開始と身体的変化が関連するというエビデンスが多くなり、体重減少・血圧低下、微量栄養素濃度の変化も含むものである。
体重減少は微量栄養素の変化を生じるものではないが、食事量の減少、その質量ともに関係があるだろう。
ビタミンサプリメントの原因もあるかも知れない。韓国の多くのサプリメントはビタミンB12は含むが葉酸は含まない。ただそれが単一の原因ではないだろうと説明している。

この研究の限界は、比較的短期間での評価であることで発症のタイミングが明瞭でないことである。サプリメントのデータは分析上使用不能であったことなど

この状況が原因なのか結果なのかに関わらず、関心が診断時期から認知症患者の栄養状態に向いている。今後は認知症予防に栄養学的な介入がどうかの議題が現れてきたことは確かである。




NHKの認知症キャンペーンがあり、開業医の悪口+アリセプトの異常もちあげがあったとのこと。最近では世の中の医療の不具合は開業医がすべて悪いことになっているようだ・・・しかもこれは政府推奨のようで・・・(苦笑)

CLINICIANの記載(pdf)とさほど変わってないと思うのだが・・・
除外診断として重要なのは完全な回復が望める認知症が約10%未満、部分的回復が望めるのが約20%未満存在する
程度なのである。

NHKはこういった現実と、認知症は家族でも発見が難しいという現実を無視

※私などは、時計記入テスト(pdf)を用いるといろんな発見があるので臨床の楽しみにしているのだが・・・これに除外診断に必要な血液検査の項目がある。ビタミンB12、ビタミンB1、アルブミンとあるが葉酸はない。

ADガイドライン:日本医療機能評価機構では、CT/MRI可能な限り全例使用と中等度以上の側頭葉・頭頂葉皮質血流・代謝機能の評価などの画像診断の有効性、HDS-Rを主体とする神経心理学的検査、そして髄液中タウ蛋白などとともに、「シェーグレン症候群、甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、ビタミンB12欠乏症、インスリノーマ」などと、正常圧水頭症、慢性硬膜下血腫、脳腫瘍、てんかん、薬剤性の鑑別が診療として必要とされる。

by internalmedicine | 2008-02-08 09:51 | 精神・認知  

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