急性肺障害・ARDSの適切なPEEP圧:'recruiting maneuver' への疑問
2008年 02月 13日
一時期高PEEPをかけて通常のPEEP圧に戻すというやり方は'recruiting maneuver' とも呼ばれ、」50cm水柱程度もの高圧PEEPを掛けて肺容積回復させてあげるというものである。(NEJM Vol. 354(17):1775-1786 April 27, 2006)
これに近いのは”aggressive PEEP”だろうか?
JAMAの報告によると、こういったPEEPのかけ方は、生命予後に関して明らかなベネフィットはなかったようである。
Meadeらの報告は低換気(6mL/予測体重kg) と 実験的な方法である低換気+高PEEPの比較、これにより、全原因病院死亡率は両群とも同等であることを示した。
本来、解脱した肺組織を広げる回復方法として通常よりPEEP値を増加させようと考えた試みであったのだが・・・
Ventilation Strategy Using Low Tidal Volumes, Recruitment Maneuvers, and High Positive End-Expiratory Pressure for Acute Lung Injury and Acute Respiratory Distress Syndrome
A Randomized Controlled Trial
JAMA. 2008;299(6):637-645.
Mercatらは、ALI患者への適切なPEEP圧の検討に関して、ランダムに5-9cm水柱の中等度PEEP群と高PEEP群(28-30cm水柱)の肺recuitmentストラテジーの比較を行った。
PEEPストラテジー増加でも有意に28日、60日死亡率を減少しなかった。
Positive End-Expiratory Pressure Setting in Adults With Acute Lung Injury and Acute Respiratory Distress Syndrome
A Randomized Controlled Trial
JAMA. 2008;299(6):646-655.
20年ほど前、best PEEP、optimal PEEP、suboptimal PEEP、optimum PEEP・・・など概念的な遊び?がはやっていた。
酸素化を重視するか、酸素運搬量を重視するかなどでどれが大事かという話だったが、現在の直接死亡率や合併症などの臨床的アウトカムを重視する姿勢から考えれば、過去の話となったようだ。
by internalmedicine | 2008-02-13 09:14 | 呼吸器系