BMI増加するとがん増加する
2008年 02月 16日
“insulin/colon-cancer hypothesis”、インスリンが直腸上皮細胞の成長因子となり、in vitroでの腫瘍細胞食のmitogenということが判明し、疫学的なエビデンスもそれを支持しているという話
hyperinsulinemia promotes colon carcinogenesis, is presented here. Insulin is an important growth factor of colonic epithelial cells and is a mitogen of tumor cell growth in vitro. Epidemiologic evidence supporting the insulin/colon-cancer hypothesis is largely indirect and based on the similarity of factors which produce elevated insulin levels with those related to colon cancer risk.(Cancer Causes Control. 1995 Mar;6(2):164-79.)
肥満と各癌に話を広げて検討したもの・・・癌予防のためにも肥満防止を・・・という話
Body-mass index and incidence of cancer: a systematic review and meta-analysis of prospective observational studiesThe Lancet 2008; 371:569-578
282137インシデントケースで、221データセット(141文献)
男性では、BMI 5 kg/m2増加と食道腺癌(RR 1·52, p<0·0001)、甲状腺癌(1·33, p=0·02)、結腸癌(1·24, p<0·0001)、直腸癌 (1·24, p <0·0001)と相関
女性では、子宮内膜癌 (1·59, p<0·0001), 胆嚢癌(1·59, p=0.04), 食道腺癌(1·51, p<0·0001)、直腸癌 (1·34, p<0·0001)と相関
男性においては、BMI増加と、直腸癌、悪性黒色腫の弱いながらの相関(RR <1.20)が見られた。
女性においては、閉経後女性乳癌、膵癌、甲状腺癌、結腸癌
両性においては、白血病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫
結腸癌においては、女性より男性の相関が高い(p<0·0001)
北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、太平洋諸国の研究と類似しているが、環太平洋では、BMIと閉経後のよりその関連が強く(p=0·009)、閉経後乳癌ではその関連が強い (p=0·06)。
肥満と癌を結びつける話は・・・
体重が増えると癌のリスクも増加する・・・このメカニズムは十分理解できていない。
3つの系統、すなわち、インスリン、インスリン様成長因子(IGF)系、性ステロイド、adipokineがもっとも研究されている候補となる。いずれもインスリンと相互関係がある。
癌の種類によりその影響にばらつきが見られ、インスリン・癌仮説( insulin–cancer hypothesis)は、慢性の高インスリン血症がIGF結合蛋白ー1やIGF結合蛋白-2の濃度を減少させ、bioavailabilityと遊離IGF-I を増加させる。細胞内環境の付随変化、すなわちmitogenesisや抗apoptosisの変化をもたらすこととなる。
循環中総 IGF-I は、遊離 IGF-Iの主体で、直腸結腸癌・前立腺癌のリスク増加と相関し、閉経後乳癌より閉経前乳癌で相関する。平均循環総IGF-I濃度は女性より男性で高い。このことにより性差の説明になり得るのかも知れないという考察。
脂肪組織内のaromatase酵素増加によりアンドロゲン系の前駆体からエストラジオールへの変換が閉経後乳癌患者では多いということでも説明できるのかも知れない。
子宮内膜癌に関してはより多くのホルモン系の関与の可能性があり、細胞増殖のみならずapoptosisを抑制、IGF-Iの局所産生を刺激する可能性がある。慢性高インスリン血症はエストロジェン感受性組織で腫瘍産生性に働く。
Adiposityはテストステロン濃度と逆相関するが、女性では正の相関をする。BMIと癌リスクの性差に影響を与えているのかも知れない。
Adiponectinはもっとも量の多いadipokineであり、内臓脂肪組織から産生され、男性より女性でその濃度が高い。腫瘍発生時に、インスリン感受性薬剤は抗腫瘍性、抗炎症性にはたらき動物では腫瘍成長を抑制するという報告もある。adiponectin濃度と癌リスクの逆相関はヒトでもその報告がある。
他の候補としては肥満関連炎症性サイトカイン、免疫応答、酸化ストレス、nuclear factor κB system、高血圧、 直腸癌とのlipid peroxidationの関係、酸逆流と食道直腸癌との関係(肥満で逆流が増える)などがあげられる。
by internalmedicine | 2008-02-16 11:37 | がん